兵庫県立龍野高校テニス部事故を考えるウェブサイト

2007年5月24日、兵庫県立龍野高校テニス部の練習中に倒れ、いまも意識が戻らないリサさん。事故発生とその後の状況について検証し、ともに考えたいと思います。

学校の責任について(その8)

[ 2011/03/03 22:51 ]
 工藤剣太くんのご両親は3月1日、大分県立竹田高校卒業式に出席しました。
 その際、式場の最後列に通されたということです。
 なんとかして「可視化」を避けたい、という学校側の意向が、こうした対応からも
読み取れるのではないでしょうか?

 卒業生一人ひとりの名前が読み上げられ、長田文生校長が卒業証書を授与しましたが
そこに「工藤剣太」の名前はなく、「以上卒業生179名」と言い切りました。
 平成20年度入学生は180人です。
 つまり、工藤剣太くんを卒業生としては認めない、とあらためて宣告したのです。
 これに対して「え、なんで?」という声であちこちであがり、場内がざわつきました。

 実は剣太くんの従妹が竹田高校の在校生で、2月の時点で自身の担任教師に対して
「おばちゃんたちが卒業式に出られないなんて、納得いかない」と訴えていました。
 担任は、彼女の意見を校長に伝える、と約束していました。
 卒業式当日、彼女は吹奏楽部の一員として、式場の2階でこの光景を目にしました。
 なぜ剣太くんの名前が読み上げられないのか?
 なぜ卒業生は剣太くんを除く179人なのか?
 彼女は、あまりのくやしさに胸が張り裂けそうになり、大声で泣きわめきました。
 その姿を見た吹奏楽部の顧問教諭がかけつけて「どうした?」と理由を聞いたところ
「くやしい!約束してたのに、剣ちゃんの名前が呼ばれなかった!」
と、その思いの丈をぶちまけました。
 話を聞いた顧問教諭は、
「それは先生たちが悪い。こんな校長を持った先生たちが悪い」
といって、部員全員が見ている前で彼女に土下座して謝った、といいます。

 1階では、剣太くんとは保育園から高校まで一緒に過ごした生徒の母親が立ち上がり、
「式の途中ですみません!今日は剣太くんのご両親もみえています。卒業生として
工藤剣太くんの名前を読んでいただけませんか?同意される方は拍手をお願いします!」
と呼びかけました。

 この提案に、卒業式場は万雷の拍手で応えました。
 工藤剣太くんも同期生のひとりとして竹田高校を卒業したと認めてほしい、という
生徒たちと保護者の痛切な思いが、拍手というかたちであらわれたのです。
 それでもなお長田校長は、ついに剣太くんの名を口にすることはありませんでした。

 この、あまりにも悲しい光景を見かねたのか、3年生の学年主任が「くどうけんたっ!」
と、高らかに名前を読み上げました。
 ご両親は卒業生が入場してくる姿を目にして以来、涙をこらえることはできませんでしたが、
この声には毅然と立ち上がり、
「ありがとうございました!」
と謝意を表しました。
 そのご両親の姿に、式場は一段と大きな拍手に包まれました。

 この学年主任は事件発生後、何度も工藤さん宅を訪問していたといいます。
 卒業式終了後も、保護者に向かって深々と頭を下げながら
「工藤剣太くんの名前を読み上げさせていただき、ありがとうございました!」
と声をはりあげ号泣していた、ということです。

 卒業生代表の女子生徒は
「わたしたちは大切なひとを亡くしました。剣太くんの死から、まだ立ち直れていません」
と、18歳の少年少女が抱えこんでいる胸の痛みを率直に語ったうえで
「わたしたちは、剣太くんを含め180名で卒業します!」
と、胸を張って宣言しました。
 また来賓として招かれていた県議が、祝辞の中で剣太くんの名前を挙げたことや、
市長が「卒業生180名の皆さん」と呼びかけたことに、ご両親は「たいへんうれしかった」
と深く感謝しています。

 長田校長は式辞の中で、卒業生に向けて
「工藤くんの死によって命の尊さを知ってください。皆さんがしっかりと歩んでいくことを
工藤くんも望んでいると思います」
と述べた、といいます。
 これに対してご両親は「あまりにもしらじらしい、勝手な言い分」と反発しています。
 長田校長にうかがいます。
 なぜ工藤剣太くんの名前は読み上げられなかったのですか?
 なぜご両親に対して、あらかじめ卒業式の日程を連絡しなかったのですか?
 なぜご両親が卒業式に出席したいという意向を伝えただけで、大騒ぎになったのですか?
 あなたの対応が、結果的に卒業生や在校生、そして保護者の不信感を招くことになった、
とは、お考えにはなりませんか?
 ぜひご回答いただきたく、何卒よろしくお願い申しあげます。

 校長は、かたちだけの卒業証書を手渡そうとしましたが、ご両親はこれを拒否し、
「学校の誠意のなさがよくわかりました。心がこもらない紙切れなんかどうでもいいです!
わたしたちは、生徒や保護者の気持ちをもらえただけで十分です!」
と言って、学校をあとにしました。

 ご両親にとって「卒業式」は終わったのでしょうか?
 軽々にコメントするようなことではありませんが、すくなくともひとつの区切り、には
なったのではないでしょうか。
 それは同級生や保護者、そして何人かの先生たちの熱い思いが伝わったからこそです。
 
 竹田高校は、事件から「卒業」することはできません。
 「卒業」などありえませんし、「終わったこと」にしてはいけないのです。
 井上ひさし氏は
「起こったことを忘れてはいけない。忘れたふりは、なおいけない」
「いつまでも過去を軽んじていると、やがて私たちは未来から軽んじられることになるだろう」
という言葉を残しています。
 学校とは安心安全で、生徒たちが心身ともに健康に成長すべき場所です。
 そうでなければならない場所です。
 竹田高校が将来において、二度と事件や事故を発生させないためには、起こったことを
けっして忘れないように語り継ぎ、かけがえのない剣太くんの命を教訓として生かす手立てを
考えつづけ、実践しつづけなければならないのです。
 それがせめてもの誠意です。

 マザーテレサ曰く「愛の反対語は、憎しみではなく無関心」
 モーパッサン曰く「最も悲しい女は、忘れられた女」
 忘れないこと、語りつづけること、いつまでも記憶にとどめることが、なにより大事です。
 そして工藤剣太くんのご冥福を、あらためてお祈りいたします。

 工藤さんの次回口頭弁論は5月19日13時10分@大分地裁です。
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プロフィール

heppoko runner

Author:heppoko runner
 子どもは社会の宝です。
 なぜなら20年後、30年後の社会を支えてくれるのは彼ら彼女らであり、彼ら彼女らのいのちや権利を粗雑に扱うということは、すなわち日本の、ひいては人類の未来に対する責任を放棄することです。
 そんな無責任な態度は、断じて許されません。
 子どものいのちと権利を守るために、わたしたちはなにをしなければならないのか?なにをしてはいけないのか?
 いっしょに考えていただきたいと思います。

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