兵庫県立龍野高校テニス部事故を考えるウェブサイト

2007年5月24日、兵庫県立龍野高校テニス部の練習中に倒れ、いまも意識が戻らないリサさん。事故発生とその後の状況について検証し、ともに考えたいと思います。

ともに闘う仲間について(その5)

[ 2010/12/10 21:22 ]
 2006年3月25日、中国・昆明で当時日本体育大学水泳部2年生だった
宮嶋武広さんが、潜水練習中に急死しました。
 武広さんは05年の日本選手権自由形1500メートルで2位に入賞、
日本代表チームの一員として北京五輪出場も有力視されるほどの選手でした。
 昆明は標高約1900メートル。
 心肺機能強化を目的とした高地合宿中に発生した事故でした。

 ご両親にとっては、もちろん青天の霹靂でした。
 現地の医師によると、
「救急車が到着した時点ですでに生体反応がなかった」ため、突然死として
処理されています。
 問題は、いかなる理由と機序によって「突然死」に至ったのか?という根本的な
疑問について、日体大からは一切の説明がなく謝罪もない、ということです。
 父親の猛さんは、現地にいたFコーチから大阪の自宅に連絡があったとき
「死後12時間以内に解剖するか否か、の回答を迫られた」
と述べています。
 しかし「12時間という説明には、なんの根拠もないこと」も、
「遺体を日本に搬送したうえで、日本国内で解剖することが可能」なことも、
まったく説明されませんでした。

 あまりにも唐突な知らせに、
「親が到着するまで解剖はせず、待っていてほしい」
と回答するよりほかありませんでした。
 猛さんと母親のまり子さんが現地に到着してみたら、武広さんの遺体は
「古い木造の病棟と病棟の間の、土の上に寝かされていた」
といいます。
 そして水泳部のK監督は
「遺体を日本に搬送するには1カ月かかる」
と伝えました。ただし、その根拠は明らかにしていません。
 なおK監督は合宿には参加しておらず、学生たちを引率していたのは
Fコーチのみでした。
 K監督は東京にいて、事故発生の一報を受けて現地に入ったにすぎません。

 元気で明るかった武広さんの変わり果てた姿に、そしてあまりにも
ぞんざいに扱われていたことに強い衝撃を受けたご両親は、
「こんな状態であと1カ月も放置されるなんて、あまりにも可哀想だ」
と、帰国して荼毘に付すことを選択しました。
 つまり解剖しなかったために、医学的な検証が行われていないのです。
 まさに日体大の思惑通りに、ことが運ばれてしまったのです。

 その後、弁護士を通じて日体大に説明を求めても、大学側の弁護士からは
「すでにご両親には了解を得ている」と、まったく身に覚えのないことを
言われただけでした。
 この不誠実きわまりない対応に憤慨した両親は、日体大とFコーチを
相手取って損害賠償請求訴訟を提訴しました。

 そして12月3日、東京地裁631号法廷で本人尋問と証人尋問が
行われました。
 証人として出廷した2人の水泳部OBは異口同音に、
「コーチからやれといわれれば、どんなにきつくてもやる。やり通す。
自分でブレーキをかけることなどできない」し、
「練習がいくらきつくても、トップを目指す以上あたりまえだと思っていた」
と明言しました。
 大学生でもこの感覚です。ましてや高校生であれば、コーチの指示が
絶対、との意識を強く持って不思議ではありません。
 そしてコーチの指示が適切であるか否かは、第三者が検証しないかぎり
判断できないことは、指摘するまでもありません。
 ぼくは、水泳日本代表に選ばれた経験のある選手から高地合宿について
「効果がある選手もいるが、やらないほうがいい選手もいる」し、
「自分の経験から言えば、内臓疲労がたまりやすく体力面の負担は大きい」
との証言を得ていることを付記しておきます。

 当時、水泳部長だったK氏は証人尋問で、
「自分は水球が専門であり、競泳部門には一切関与していない。すべては
競泳チームのK監督が責任を負うべきこと」
とし、質問に対して「知らない」「わからない」と繰り返すのみでした。
 なお、競泳チームのK監督は出廷しなかったため、K監督の見解を聞く
機会は得られませんでした。
 そして被告であるFコーチも、その回答は
「わからない」「把握していない」「覚えていない」のオンパレードでした。

 このような無責任体質が、まさに安全配慮義務を十全に果たそうという
意識の欠如をもたらし、その結果、宮嶋武広さんという有望な水泳選手を
急死させるという重大な事故を発生せしめた、と指摘せざるを得ません。
 ご両親は、「Fコーチの発言は当初から二転三転して矛盾だらけ」
と指摘しています。
 詳しくは「武広 二十歳の夢」(http://blog.livedoor.jp/m_takehiro/)
をご参照ください。

 それでもわずかな救いとして、日体大の教職員やOBが数多く宮嶋さんを
支援しているという事実があります。
 そしてK氏やFコーチの証言内容を「まったく事実に反するもの」で、
「信頼できない。反論すべき点がいくつもある」と強く非難しています。
 つまり日体大には、自浄作用が働くことを期待させる流れが、完全に
枯渇したわけではない、ということです。
 この流れが、教授会や理事会の主流となるべきです。
 すべてのスポーツは危険と隣り合わせです。
 だからこそ指導者は、選手の安全に最大限配慮することが求められるのです。
 ましてや日体大は、多くの卒業生が教員として採用され働いています。
 将来指導者を目指している学生に対して、指導者として不可欠な資質を
徹底的に身につけさせるべき大学なのです。
 
 猛さんは本人尋問の際、
「もし武広くんが1日だけ生き返られたら、どうやって過ごしたいですか?」
という弁護士の問いかけに対して
「ただ、じいーっと見てるだけやないですかなあ」
と、静かにつぶやきました。
 次の瞬間、満員の傍聴席には、こらえきれない嗚咽が広まっていました。
 Fコーチの目には、この光景はどのように映ったのでしょうか?
 なおK氏は、自らの証言が終わった時点で退廷しました。
 したがって猛さんの尋問は、耳にしていません。

 次回口頭弁論は11年3月18日10時30分、東京地裁631号法廷です。
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Author:heppoko runner
 子どもは社会の宝です。
 なぜなら20年後、30年後の社会を支えてくれるのは彼ら彼女らであり、彼ら彼女らのいのちや権利を粗雑に扱うということは、すなわち日本の、ひいては人類の未来に対する責任を放棄することです。
 そんな無責任な態度は、断じて許されません。
 子どものいのちと権利を守るために、わたしたちはなにをしなければならないのか?なにをしてはいけないのか?
 いっしょに考えていただきたいと思います。

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