『柔道事故』(内田良、河出書房新書)が発行されました。
筆者の内田氏(名古屋大学大学院准教授)は、教育社会学の研究者
としての見地から、過去29年間で118人の中高生が学校柔道で死亡
していたという事実を掘り起こし、
「これを放置したままでいいのか?」
と、世に問うています。
特に事故が発生した場合の事後対応について。
・事実に向き合い、精緻に調査を行い、事故発生に至る機序について
明らかにしたうえで原因を究明し、実効性ある再発防止策を策定する
というプロセスがまったく機能していないこと。
・責任回避を唯一の目的として関係者が一致団結し、事態の収拾と沈静化
のために事実を隠蔽し、事実ではないことを捏造し、風説を流布する
ことを躊躇しないこと。
その際、被害者の権利と名誉は一切顧慮されないこと。
・徹底した不可視化の結果、事故情報が共有されず、したがって
不適切な「指導」が温存され、科学的な指導法の確立につながって
いないこと。
まさにリサさんとご両親が経験したことが、多くの実例をもって語られて
います。
すべてのスポーツは危険と隣り合わせです。
にもかかわらず、競技力の向上を図るあまり、本来最優先課題であるべき
安全対策が等閑に付されているという由々しき実態が描かれています。
柔道関係者のみならず、教育関係者にはぜひ、ご一読を願います。
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