兵庫県立龍野高校テニス部事故を考えるウェブサイト

2007年5月24日、兵庫県立龍野高校テニス部の練習中に倒れ、いまも意識が戻らないリサさん。事故発生とその後の状況について検証し、ともに考えたいと思います。

保護者の知る権利について(その5)

[ 2011/12/18 22:47 ]
 2011年12月16日、衆議院第2議員会館で開催された
「学校における柔道事故に関する勉強会」に出席してきました。

 これは、中根康浩衆議院議員と初鹿明博衆議院議員(ともに民主)が
発起人となって、学校現場において毎年、柔道事故が繰り返し発生し、
多くの生徒が亡くなり、あるいは重篤な後遺障害に苦しんでいるという
現状について国会議員が学び、文部科学省の見解を聞くことが趣旨です。

 当事者として「全国柔道事故被害者の会」(小林泰彦会長)の会員4人が、
それぞれ被害に遭った状況と、その後の実態について訴えました。
 この勉強会における詳細については、
「全国柔道事故被害者の会」ホームページhttp://judojiko.net/
および
「滋賀県愛荘町立秦荘中学校柔道部事件」http://judojiko.blog58.fc2.com/
を、ご参照ください。

 当ブログでは、勉強会に参加した複数の議員から提起された
「なぜ事故が繰り返し発生しているのか?それは調査検証が十分に行われず、
したがって原因究明がされていないという実態があるからではないのか?」
という問題意識について、その実例を記載します。

 1994年8月、福島県立高校柔道部の夏合宿中に、当時2年生の男子部員が
熱中症により死亡するという事故が発生しました。
 学校は「例年通りの合宿で問題はなかった」とする事故報告書を作成し、
福島県教育委員会に報告。県教委はそのまま発表しました。
 保護者は、水分摂取を制限するなど指導方法に問題があったことが事故の原因
として、損害賠償請求訴訟を提訴しました。
 一審・福島地裁は、原告の主張を全面的に認め原告勝訴判決を言い渡しました。
 福島県はこれを不服として控訴しましたが、仙台高裁で和解が成立しました。
 福島県が和解条項に
「二度と同じような事故を起こさない」
「事故報告書には被害者および保護者の意見を書き加えることができる」
ことを盛り込んだため、遺族は和解に応じたのです。

 ところが2003年10月。
 福島県須賀川市立中学校柔道部で、1年生の女子部員が2年生の男子部員
(いずれも当時)から「練習」の名を借りた暴行を受け、急性硬膜下血腫を発症する
という事故が発生しました。
 たいへん残念なことに「二度と同じような事故を起こさない」という和解条項が
生かされず、この女子生徒は現在も意識が戻らないままです。
 したがって「事故報告書に被害者の意見を書き加える」ことは不可能です。
 そして学校も須賀川市教委も、保護者に対して「意見を書き加えられる」ことを
通知しませんでした。
 当然、保護者はそうした権利が担保されていることは知らないままでした。
 このようにして須賀川市は、仙台高裁での和解条項を骨抜きにしました。

 そのうえで中学校は事故報告書に、被害生徒の保護者が、本件事故に関しては
「柔道部、柔道部員の責任でもないし、学校の責任でもないと発言した」
という、まったく事実ではない内容を記載し、市教委に提出しました。
 被害生徒の保護者は、
「身に覚えのない発言を捏造し、事実を隠蔽する学校の姿勢は容認できない」
として須賀川市と福島県、暴行を加えた元生徒を相手取って損害賠償請求訴訟を
提訴しました。
 09年3月27日、福島地裁郡山支部は
「事故報告書の記載内容には大いに疑問がある」
と学校の対応を厳しく批判し、原告勝訴判決を言い渡しました。

 須賀川市は控訴を見送り、一審判決が確定しました。
 ところが橋本克也市長は保護者に対し、事故報告書の記載内容について
「書き換える考えはない」と明言しています。
 これはたいへん不思議なことです。
 福島地裁郡山支部が、事故報告書を「信用できない」と判断したことに対し、
その判断が誤りであるというのであれば、控訴すればよかっただけの話です。
 控訴しなかったということは、須賀川市も判決について諒としたうえで
改めるべき点は改めるという姿勢を示した、と理解するのが当然です。

 しかし橋本市長は、事故報告書というれっきとした公文書の記載内容が虚偽に
満ちたものであるにもかかわらず、これを放置すると言い切っているのです。
 これは市民の権利と利益を侵害し名誉を毀損し、説明責任を果たそうとしない
著しい背信行為であり、事故再発の恐れについても顧慮しないという、きわめて
不誠実で不適切な対応と言わざるを得ません。

 12月16日の勉強会に須賀川市の被害者と保護者は出席できませんでした。
 したがって中根氏・初鹿氏をはじめとする国会議員の皆さんが、当事者の訴えを
直接耳にすることはできなかった事案でしたので、当ブログで紹介しています。
 そしてこれは、
「調査検証が不十分なために原因究明が進まず、したがって事故が再発している
要因なのではないか?」
という問題意識に対するひとつの回答であり、きわめて残酷な実例です。
 さらに残念なことは、こうした事案は福島県のみならず、柔道事故のみならず、
全国各地でいまも数多く起こっているということです。

 被害者は言葉を奪われ、自ら告発することはできません。
 保護者も介護や裁判対策に追われ、世に訴えることは現実問題として困難です。
 そして当事者が必死の思いで声をあげても、学校や行政のプロパガンダに
かき消されてしまい、無力感に打ちひしがれているという実態があります。
 国会議員の皆さんには、人権を侵害され名誉を毀損された被害者の痛切な嘆きが
全国各地に渦巻いているという実情に目を向け、被害者の人権と名誉の回復を
図るべく、一日も早く有効な政策を打ち出されることを心より願うものです。
スポンサーサイト
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL

プロフィール

heppoko runner

Author:heppoko runner
 子どもは社会の宝です。
 なぜなら20年後、30年後の社会を支えてくれるのは彼ら彼女らであり、彼ら彼女らのいのちや権利を粗雑に扱うということは、すなわち日本の、ひいては人類の未来に対する責任を放棄することです。
 そんな無責任な態度は、断じて許されません。
 子どものいのちと権利を守るために、わたしたちはなにをしなければならないのか?なにをしてはいけないのか?
 いっしょに考えていただきたいと思います。

最新トラックバック