兵庫県立龍野高校テニス部事故を考えるウェブサイト

2007年5月24日、兵庫県立龍野高校テニス部の練習中に倒れ、いまも意識が戻らないリサさん。事故発生とその後の状況について検証し、ともに考えたいと思います。

不適切な生徒「指導」について(その2)

[ 2013/12/16 19:49 ]
 2013年12月5日付毎日新聞は、友田明美・福井大教授のインタビュー
記事を掲載しています。
 このなかで友田氏は、暴言虐待を受けた人の脳は会話や言語をつかさどる
聴覚野の一部が14%拡大し、体罰を長期にわたり経験した人の脳は感情や
理性をつかさどる前頭前野が19%萎縮していた、との研究結果を明らかにし、
「脳は成長すると、神経細胞を結合するシナプスが減少します。萎縮も拡大も
脳に良くありません」と述べたうえで、
「大きなストレスを受けると副腎皮質からコルチゾルというストレスホルモンが
多量に分泌され、脳にダメージを与える」ことを明らかにしています。

 友田氏の研究結果を踏まえれば、当ブログ13年6月6日付記事でご紹介した
今野彩花さんのように、長期間にわたって教師から不適切な指導を受けた場合。
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201306-14.html

 あるいは、複数の教師に取り囲まれ長時間にわたって叱責を受けたり、
必要以上に厳しい懲戒処分を言い渡されたりした場合、心理的視野狭窄状態に
陥って正常な判断力を失い、突発的な自傷行為におよぶことも十分にありうる、
ということです。
 その実例は『指導死』(大貫隆志編著、高文研)をご参照ください。

 内田良・名古屋大大学院准教授はスポーツ事故について、
「医学など科学的な知識はアップデートされ、最新の知見を身につけることが
可能だ。しかし指導者の経験知は十年一日で更新されることはない。科学的な
指導メソッドを確立すべきだ」と強調したうえで、
「当事者の訴えに耳を傾けず、社会的な問題として事故情報を共有することなく
放置してきたことが事故の再発を招いている。だからこそデータを開示して
可視化する必要がある」と提言しています。

 これはスポーツに限定した話ではありません。
 いじめにも、指導死にも、通じることです。
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不適切な生徒「指導」について

[ 2013/11/18 00:52 ]
 2013年11月13日、NHK広島放送局は

 去年10月、東広島市の中学2年生の男子生徒が複数の教師から
指導を受けたあと自殺した問題について、13日、開かれた市議会の
委員会で議論が行われ、生徒が1年生の時、学校側が3日間にわたって
反省文を書かせていた「特別指導」に対して、疑問の声が相次ぎました。
 この問題を巡っては、市の教育委員会が設置した調査委員会がことし
9月、「自殺と一連の指導が関連していることは明らかだと思われる」
とする報告書をまとめたものの、男子生徒の両親は、調査が不十分だ
として再調査を求める陳情書を市議会に提出しています。
 これについて13日、開かれた市議会の文教厚生委員会では、生徒が
1年生の時、学校側が3日間にわたって反省文を書かせていた「特別指導」
について議論が交わされました。
 「特別指導」では、生徒が教師の悪口を書いたとして3日間にわたり
授業を受けさせずに、教室とは別の場所で反省文を書かせていたという
ことです。
 委員からは「男子生徒がやったことは本当に特別指導にあたることなのか」
とか、「特別指導を行ったことが自殺の一因になったのではないか」などの
疑問の声が相次ぎました。(後略)

と報じました。

 男子生徒に対して行われた「特別指導」の内容について、そして
自らいのちを絶つまで追い詰められた状況については
http://shidoushi.com/
をご参照ください。

 「全国学校事故・事件を語る会」の代表世話人、内海千春氏は
「目的と手段と結果が妥当なものであって、初めて指導といえる」
と指摘しています。
 いかに「目的」が崇高なものであったとしても、「手段」が適切なもので
なければ、妥当な「結果」を得ることはできない、ということです。

 上記事案において教師たちが、なにを指導の「目的」としていたかは、
現時点では明らかになっていません。
 しかし、その「手段」は「教師の価値観を一方的に押し付け、反省を
強要すること」だったと推定できます。
 すなわち「教師は無謬」という前提に依拠し、一切の釈明も反論も批判も
許さないという態度はまったく科学的ではなく、「豊かな人間性と創造性を
備えた人間の育成を期す」とする教育基本法の趣旨に反するものである、
といわざるを得ません。

 これは「子どもの権利を守る長崎の会」の代表、安達和美さんが
「子どもは、まちがいを重ねながら成長するもの」と述べていること。
 汐見稔幸・白梅学園大学長が、
「みんな小さな不道徳をしながら、だんだん道徳的になっていく」と
述べている(13年9月24日付西日本新聞)こととは正反対の、
むしろ「指導の名を借りた虐待」ではないでしょうか?

 そして13年11月14日付毎日新聞「余録」は、
「(前略)失敗のあった時どうするか。活力ある組織はそれを教訓に
広範な改革をする。官僚的組織は失敗のあった部分のみ修正する。
病的な組織では失敗は罰せられるか、隠蔽される−−これはウェストラム
という米国の学者の組織の3分類であった(後略)」と書いています。

 たいへん残念なことですが、多くの教委に「病的な組織」の特徴である
隠蔽体質がみられます。
 これを容認することはできません。
 不幸にして事故・事件に巻き込まれた生徒たちの権利と名誉を回復する
ために、公正性・中立性・透明性を担保した精緻な調査によって、
全容を解明することが不可欠です。

学校事故・事件被害者全国弁護団設立のお知らせ

[ 2013/10/20 20:00 ]
 このたび「学校事故・事件被害者全国弁護団(案)」が
設立される運びとなりました。

 同弁護団の設立趣旨は、
「いじめ自殺をはじめ、学校での問題に起因する子どもの事件が
多発しています。
 ところが、子どもが本来学び育てられるべき学校で起こった事故は、
その適切な解決が図られているとは言えません。
 学校が物理的にも組織的にも囲われた領域にあり、子どもや
保護者の立場、教員の立場などが、問題の解明に難しい要素を
与えているからです。
 知識と経験を持ってこの問題に取り組むことが必要です。
 問題意識と経験交流・研究を通じて、この問題に取り組もうと
この会を発足することにしました」
とのことです。

 以下の要領で創立総会が開催されますので、お知らせします。
 
 日時:2013年11月17日(日)14時00分
 会場:中央大学駿河台記念館610号室
    http://www.chuo-u.ac.jp/access/surugadai/
 参加費:500円(資料代)
 連絡先:杉浦ひとみ弁護士(東京アドヴォカシー法律事務所)
 FAX:(03)3816-2063
 E-mail:new@childrens-rights.sakura.ne.jp

 当日は「全国学校事故・事件を語る会」の代表世話人、内海千春氏が
基調報告を行います。

 くわしくは、全国学校事故・事件を語る会ホームページ
http://katarukai.jimdo.com/シンポジウム-講演会/
をご参照ください。

ジェントルハートプロジェクト、シンポジウムを開催

[ 2013/09/23 12:08 ]
 2013年9月22日付産経新聞は

 いじめ防止に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」
(川崎市)は21日、いじめ問題に関する児童生徒へのアンケート結果
を発表した。いじめ被害者のうち「死にたい」と思ったことがある
子どもが3人に1人に上った。
 昨年10月~今年5月、同法人が講演会に訪れた小中高校で調査票を
配布。15都道府県の児童生徒約8400人が回答した。
 いじめの被害経験があるのは、38%の3215人。小中高校別では、
小学生は49%、中学生35%、高校生29%だった。
 被害者のうち当時「つらくて死んでしまいたいと思ったことが、とてもあった」
と答えたのは11%の336人、「少しあった」は24%の773人だった。
 ジェントルハートの武田さち子理事は「きっかけがあれば、どの子も
命を絶ってしまう可能性がある。言葉や冷たい態度を取るだけのいじめでも
深刻に考えないといけない」と話した。

と伝えました。

 これは同法人が13年9月21日、東京都内でシンポジウムを開催した際、
公表したものです。
 上記アンケートの結果を分析した小林麻衣子氏(筑波大学大学院)は、
「加害・被害両方の経験がある子は全体の18.2%だが、大人から
『やられた時はやり返してもよい』または『やり返すぐらいの強さも必要』
と教えられた子が加害・被害両方を経験している割合は小学生で44.7%、
中学生では54.2%に達している」ことを明らかにしました。

 これについて同法人の小森新一郎代表理事は
「いじめとは加害者の問題だ。加害者がいなくなれば、いじめはなくなる。
大人の言動こそが、いじめの連鎖を招いているのではないか」
との見方を示しました。

 また同法人の篠原真紀理事は、事後対応のあり方について言及し、
「大津市をきっかけに、各地で第三者による調査委員会を設置する動きが
広まっているが、第三者委への信頼性を担保するためにも委員の半数は
被害者家族の推薦によるべきだ」
としたうえで、
「最も重要なのは、だれのために、なにを目的として調査を行うのか、
ということだ。亡くなった子の人権と名誉の回復をめざすべきで、川崎市
教育委員会の担当者は亡くなった子に寄り添った調査を実施してくれた
と思っている。調査委の形態が問題なのではない」
と強調しました。

 小林氏も
「事実を知ることは、被害者家族が生きていくために必要なことだ」
と述べました。

 なお川崎市教委の対応につきましては、当ブログ12年11月2日付記事
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201211-15.html
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201211-14.html
および12年11月11日付記事
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201211-8.html
も、併せてご参照いただけましたら幸いです。

各地で子どもの人権を守る動き(その4)

[ 2013/04/17 23:32 ]
 2013年4月16日付朝日新聞熊本版は、

 和水町立中学の男子生徒が自殺したのを受け、町議会は15日の
臨時議会で、自殺といじめとの因果関係を調べる第三者委員会を設置
する条例案などを全会一致で可決した。
 町によると、委員数は5人以内。町と利害関係のない学識経験者で、
弁護士、大学教授、臨床心理士、医師を想定しているという。
 補正予算には、委員のほか、委員の指示で必要な調査を行う調査員
(5人以内を想定)の報酬と旅費計約307万円を計上した。
 調査員は大津市の例にならい、町が別に定める予定の規則で、
置くことができるようにする。
 議事では「調査結果はどう扱われるのか」「委員会の期間はどう考えて
いるか」などの質問があり、町は「遺族、学校、町長に報告され、
可能なものは公開されるだろう。町民への報告の必要はある」
「委員会は月に最低2回はやってもらうのがいい」などと答弁した。
 坂梨豊昭町長は閉会後、報道陣に「委員会はなるべく早く設置したい。
 いよいよ、しっかりした調査がスタートする。これで和水だけでなく、
九州や全国のいじめ抑制になれば、と考えている」と話した。

と報じました。

 井上忠勝・教育長は13年3月11日の同町議会で
「精査した中ではいじめが(自殺に)直接原因となるようなことはなかった
というのが揺るぎない信念」
と述べていましたが、1カ月余で急転直下の展開となりました。

 しかし、NPO法人・ジェントルハートプロジェクトの大貫隆志理事は
「『第三者委員会を設置する』というフレーズがコメント逃れの手段として
便利に使われたり、新しい隠蔽の材料に使われないよう、注意して
見ていかなくてはならない」
と指摘しています。

 それは全国学校事故・事件を語る会の代表世話人、内海千春氏が
「中立性・公正性・透明性を担保しないまま『名ばかり調査委』を設置する
ことで、学校と教委の見解が正当であるとしてきたのは由々しき問題だ」
とし、
「第三者委員会を設置する場合、その目的を明確にし、十分な人員や時間、
予算を与えなければいけない。
 被害者の家族、または被害者やその家族の視点から見ることができる
代理人もメンバーに入れるべきだ。教育現場には、隠蔽や沈静化が
真相解明とは真逆の誤った行為であることに早く気づいてほしい」
と強調していることと軌を一にするものです。

 当事者の思惑に左右されず、事実を直視し事故・事件の全容を解明し、
実効性ある再発防止策を策定し運用するためには、運輸安全委員会と同等の
権限と責務を備えた、公正中立な第三者機関を常設するための法整備が急務
だと考えます。
 そして井戸敏三・兵庫県知事には、龍野高校テニス部事故調査委員会の
設置をあらためて要望いたします。

 なお全国学校事故・事件を語る会は、13年6月2日9時30分から
兵庫県学校厚生会館(神戸市中央区北長狭通4-7-34 
☎078-331-9955)でシンポジウム「第三者委員会のあるべき姿を問う」
を開催します。
プロフィール

heppoko runner

Author:heppoko runner
 子どもは社会の宝です。
 なぜなら20年後、30年後の社会を支えてくれるのは彼ら彼女らであり、彼ら彼女らのいのちや権利を粗雑に扱うということは、すなわち日本の、ひいては人類の未来に対する責任を放棄することです。
 そんな無責任な態度は、断じて許されません。
 子どものいのちと権利を守るために、わたしたちはなにをしなければならないのか?なにをしてはいけないのか?
 いっしょに考えていただきたいと思います。

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