兵庫県立龍野高校テニス部事故を考えるウェブサイト

2007年5月24日、兵庫県立龍野高校テニス部の練習中に倒れ、いまも意識が戻らないリサさん。事故発生とその後の状況について検証し、ともに考えたいと思います。

スポーツ事故根絶に向けて(その14)

[ 2017/01/08 07:42 ]
 「全国柔道事故被害者の会」(村川弘美代表)がコメントを公表し、
群馬県館林市立中柔道部で繰り返し事故が発生した件について、
同市の「柔道安全指導検討委員会」が発表した報告書の概要に
疑問を呈しています。
http://judojiko.net/news/2416.html

 コメントは2016年12月30日付。
 このなかで、館林市の「柔道安全指導検討委員会」に対し

「頭を打つなどした生徒が頭痛や吐き気を訴え意識障害の兆しが
みられた場合は、指導者はすぐに救急車を呼ぶべきだ」と提言しているが、
「どうして学校は19分間も救急車を呼ばなかったのか」という問題に
ついてなぜ究明しないのか?

と問いかけています。

 すなわち同委員会が発表した報告書の概要は、事故について
表面的な事象をなぞったにすぎず、精緻に分析したうえで原因を究明する
には至っていない、ということです。
 「ファクトとエビデンスを明らかにし、情報を公開し共有するというプロセス」
を経ていないのですから、上記報告書は仏を作ったものの魂は入っていませんし、
画竜点睛を欠くものと言わざるを得ません。
 そして指導体制の不備が、ひとりの男子部員を図らずも2度も「加害者」に
してしまった、という事実があります。
 彼の胸中を思えば、非常に遺憾です。

 「全国柔道事故被害者の会」のコメントは、柔道に限らずすべてのスポーツが
危険と隣り合わせであることをあらためて想起させ、関係者は事故予防に
全力を尽くすべき、との提言です。
 ぜひご一読ください。
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群馬県の中学校柔道部で重大事故が繰り返し発生

[ 2016/12/30 21:09 ]
 2016年12月29日付朝日新聞群馬版は

 館林市立中学3年の男子生徒が柔道部の練習中に頭を打ち意識不明となった
事故で、再発防止策を検討する委員会(委員長=小川正行・群馬大教授)は
28日、指導者が部員の技能・体格差に配慮し、大外刈りの指導には細心の
注意を払うことを柱とする報告・提言書の概要を公表した。
 事故は5月31日、身長が16センチ高く、69キロ重い同級生の男子部員に
大外刈りで投げられた時に起きた。2人は1年時からペアを組み、今までけがは
なく、顧問らは組み合わせを容認してきたが、検討委は「指導者は体格差を
十分配慮する必要があった」と判断した。(中略)
 市教委によると、男子生徒は筆談を通して簡単な受け答えができるが、
意識障害があるという。

と伝えています。

 16年7月21日付毎日新聞によると、投げられた生徒は身長約160センチ、
体重48キロ。投げた生徒は約175センチ、117キロとのことです。

 そして上記事故の約2週間前、同じ学校の柔道部で3年の女子生徒が、
体重差が40~50キロある男子部員と乱取りをした時、倒れてのしかかられる
という事故があったことが明らかになっています。
 女子生徒の母親によると10月に右足甲の複雑骨折の診断を受け、11月に
手術を受けたということです。

 こうした問題について、「全国柔道事故被害者の会」は
「館林市が設置したのは『柔道安全指導検討委員会』であって、『事故調査委員会』
ではない。すなわち事故当事者である柔道指導者を擁護する立場の人間が、
第三者として公正に事故調査を行えるとは考えにくい」
との見解を示しています。

 「全国柔道事故被害者の会」は何年も前から、重大事故が発生するメカニズム
について検証し、「体格差・大外刈り・初心者がキーワード」だと再三にわたって
警告してきました。

 同会の提言を受けて、全日本柔道連盟も
「体重差のある者同士で組む時には重大事故が起きる危険性がある」として
指導者らへの周知を図ってはいますが、現場の指導者に完全に浸透している
とはいいがたい、という現実が明らかになりました。

 内田良・名古屋大大学院准教授が
「ファクトとエビデンスを明らかにし、情報を公開し共有するというプロセスが
定着しなければ、同様の事故を繰り返し発生させる」
と警告していますが、残念なことに現実のものになってしまいました。

 被害にあった男子生徒の母親は、
「事故後の学校側の説明では、事故があった時は指導者が背を向けている
状態で、どうして頭を打ったのかがはっきりしない、ということだった。今回の
報告書でも、そこがはっきりせず、なぜこの事故が起きたのか、結局は
わからないことが残念でならない。
 普段は体重の重い部員同士で組むのが、この日は他の部員が先に帰宅し、
3人の部員で練習することになり、息子が相手をすることになった。やはり
体重差が問題だったと思う。人数が少なくなった後の時間は、基本練習だけに
するなど状況に合わせた練習メニューにするか、早く切り上げても良かった
のではないか。
 今回の検証は、これ以上事故を起こさないためのもの。のど元過ぎれば
熱さを忘れる、にせず、柔道を含めた全国のスポーツ現場で、うちの事故を
教訓として練習方法を考えて欲しい」
と訴えています。(16年12月29日付朝日新聞群馬版)

スポーツ事故根絶に向けて(その13)

[ 2016/06/06 12:32 ]
 『部活動の安全指導-先生方に心がけて頂きたいこと』
http://judojiko.net/apps/wp-content/uploads/2016/04/bukatsu_anzen.pdf
の筆者である南部さおり氏が今年度、日本体育大学体育学部准教授に就任し、
社会体育学科で「スポーツ危機管理学」の講座を担当しています。
http://www.nittai.ac.jp/gakubu/kyoin_list/index.html

 南部氏は
「本学学生の9割が教員志望。彼らの多くが卒業後、保健体育の教員として
授業を担当し、部活動の指導にあたることになる。その際、スポーツ事故を
起こさない安全な指導法を身につける必要がある。熱中症対策など医学的な
知識を学ぶことも不可欠だが、やはりなにより大事なのは安全第一という
マインドを植えつけることだ」
とし、そのために
「スポーツ事故の被害者やご家族から直接お話を伺うことで、学生たちの
意識改革につなげたい。ついては当事者の皆さんのご協力をお願いしたい」
と述べています。

 南部氏の取り組みにご協力いただける方は、
nambu3@nittai.ac.jp
または
〒227-0033 横浜市青葉区鴨志田町1221-1 日本体育大学体育学部
Tel&Fax (045)479-7115
まで、ご連絡いただけますようお願いいたします。

スポーツ事故根絶に向けて(その11)

[ 2016/04/28 21:10 ]
 2016年4月23日付朝日新聞のコラム「縦横無尽」で、中小路徹・編集委員が

 ラグビー事故勉強会という集まりがある。同志社大大学院に通う京都市の
中村周平さんが、弁護士や大学の研究者らと開くものだ。
 中村さんは高校時代、ラグビー部の練習中の事故で首の骨を折り、
首から下の感覚を失った。今はバリアフリーアパートで、介護を受けながら
暮らしている。
 スポーツ事故について、被害者の家族たちが原因究明や再発防止に向けた
提言や情報発信をする会が国内にいくつかあるが、この勉強会では、
事故後のことに重点の一つを置いている。
 「ラグビーはコンタクトスポーツという特性上、事故をゼロにすることは困難。
決して事故を容易に認めるということではなく、誰もがけがをし、けがをさせる
可能性があるからこそ、事故が起こった後についてしっかりした認識を持つ
ことが必要」という中村さんの考えからだ。
 例えば補償の在り方。後遺症が残るけがをした場合、学校管理下で起こった
事故では、日本スポーツ振興センターの障害見舞金の最高額が3770万円。
学校外の活動ではスポーツ安全保険があり、最高3150万円が出る。
だが、入院費用や自宅の改修などを考えれば足りない。
 そこで裁判などで損害賠償を請求するしかないのが、日本の実情だ。
だが、仲間や指導者に過失があったかを含め、当事者同士が争う形になり、
原因究明も進まず、苦みばかりが残るケースが多い。
 「多人数が練習するチームスポーツの事故は多くの場合、偶発的で加害者は
いない。事故後に過失責任を問うことなく、原因究明や再発防止に向けて互いが
対話できる場が重要では」
 そんな思いで、自らを「被災者」と呼ぶ中村さんは、豪州の共済保険をモデル
とする制度の導入を提言する。ラグビー協会に登録するすべての人が強制的に
入る保険だ。補償の財源が確保されることで当事者の対立がなくなる。事故の
リスクに向き合う風潮が醸成でき、原因究明につながることも期待される。
 指導者も事故の責任を抱え込み、苦しむことを中村さんは知っている。
だから、勉強会には指導者たちにも参加してもらい、その立場からの声も
聞きたいという。4回目となる次回は5月28日、同志社大で開かれる。
ホームページも近々できあがる。

と書いています。

 これについて、青少年スポーツ安全推進協議会の澤田佳子会長は
「どのようなスポーツ事故も決して被害者、被災者が納得できる結論はない」
としたうえで
「ラグビー事故勉強会という集まりが結成されたこと。まずはその姿勢と知性に、
敬意を表したい。
 競技の特性を知る人たちが事故のリスクや補償について考えることは、
やがてラグビーというスポーツに大きく貢献することになるだろう。
 自分が好きなスポーツで怪我を負うことがないように。
 そして万が一起こってしまった事故に対して、きちんとした検証と補償が
なされていくことは、青少年スポーツ安全推進協議会にとっても大変重要な
課題であると考えている。
 どんなに時間が経っても決して被害者、被災者が自分や家族に起こった
悲劇を忘れることはない。
 そして原因究明、再発防止にはその競技の指導者の協力が不可欠だ」

とコメントしています。
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201510.html

 南部さおり・日体大准教授は
「事故が起こって幸せになる人はいない」
と繰り返し、スポーツ事故の予防に万全を尽くすべきだと強調しています。
 このあたりまえのことをあたりまえに行えるよう、指導者の意識改革が
強く求められます。

第7回「学校事故対応に関する調査研究」有識者会議(その4)

[ 2016/03/27 20:05 ]
 第7回有識者会議でとりまとめた指針には、コーディネーターについて
「被害児童生徒等の保護者と学校では立場が異なることを理解した上で、
中立的な視点で被害児童生徒等の保護者と教職員双方の話を丁寧に聴き、
情報を整理し、当事者間の合意形成を促す等、常に公平な態度で双方の
支援を行うことで、両者が良好な関係を築けるよう促すことを主な役割とする」
としています。

 これは第6回有識者会議に提示した指針案にはなかったもので、
コーディネーター制度を導入する際の理念として中立性と公平性を担保する
ことを明記しており、これまた一歩前進です。

 しかし16年3月18日付朝日新聞が

 広島県府中町の町立府中緑ケ丘中学校3年の男子生徒(当時15)が
自殺した問題で、学校が調査報告書に記した生徒と担任教諭の5回にわたる
面談のやりとりは、担任による面談時のメモが根拠とされていたが、メモは
存在していなかったことがわかった。17日、坂元弘校長が明らかにした。
 すべて担任の記憶のみに依拠して作成されたことになり、報告書の信用性が
問われそうだ。

と報じています。

 これはコーディネーター制度について議論する以前の問題です。

 こうした失策を防ぐには児玉政徳委員(横浜市教委支援員、元同市立中学校長)が
「調査は学校が事実を把握し、これを保護者に正しく伝えることが目的であるべきで、
学校としてやらなければならないこと」
と強調したことを、現場の教職員が肝に銘じること。

 それには桐淵博委員(埼玉大教授、前さいたま市教育長)がいう
「学校は子どもたちを預かっている場所であり、元気なまま家庭に帰すのが
最低限にして最大の役割」
という意識を、すべての教職員に徹底することから始めるよりほかありません。

 渡辺正樹座長(東京学芸大教授)は
「事故・事件は『起きない』のが一番大事なこと。指針は、不幸にして『起きてしまった』
事例に適切に対応し教訓とする、という方向性は打ち出せたと考えている」
として、有識者会議における議論のまとめとしました。

 住友剛委員(京都精華大教授)は、被害者と家族へのメッセージとして
「指針で十分に詰められていない部分は、皆さんから提案して書き込んでいける。
 細部を積み上げていく議論に参加できるチャンスだととらえてほしい」
とし、
「文科省や教育行政が出してくるものを待って、それをただ批判するというのではなく、
自らの経験を踏まえた具体的な提案ができるか、という覚悟が問われている」
と述べています。
プロフィール

heppoko runner

Author:heppoko runner
 子どもは社会の宝です。
 なぜなら20年後、30年後の社会を支えてくれるのは彼ら彼女らであり、彼ら彼女らのいのちや権利を粗雑に扱うということは、すなわち日本の、ひいては人類の未来に対する責任を放棄することです。
 そんな無責任な態度は、断じて許されません。
 子どものいのちと権利を守るために、わたしたちはなにをしなければならないのか?なにをしてはいけないのか?
 いっしょに考えていただきたいと思います。

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