兵庫県立龍野高校テニス部事故を考えるウェブサイト

2007年5月24日、兵庫県立龍野高校テニス部の練習中に倒れ、いまも意識が戻らないリサさん。事故発生とその後の状況について検証し、ともに考えたいと思います。

日本子ども安全学会第4回大会

[ 2017/09/11 20:26 ]
 2017年9月9日、「日本子ども安全学会」第4回大会が都内で開催され、
全国各地から約70人が参加しました。

 石井拓児・名古屋大准教授が
「学校事故・部活動問題の教育法的・制度論的検討」
と題する基調講演を行い、
「部活動の指導者になりたいから教員を目指している」
という学生が相当数いることに加え、
「部活は保護者からクレームが来るからやめられない」
という現役教員の声を紹介したうえで、
「部活動が過熱するのは、教員と一部保護者の共犯関係に原因がある」
と指摘しました。
 またユネスコが15年に発表した「体育・身体活動・スポーツに関する国際憲章」に、
「スポーツに専門的責任を負うすべての人材は、適切な資格を有し、トレーニング
を行い、継続して専門的力量の向上に努める」
との記述があることを指摘し、
「わが国にも米国公認アスレティック・トレーナー(ATC)に準じる資格制度を確立し、
公立・私立を問わず、すべての学校に有資格者のトレーナーを配置すべきだ。
 その際、トレーナーには顧問教諭や外部指導者が適切な指導を行えるよう、
指導監督する権威と権限を与えることも不可欠だ。文部科学省には資格認定と
予算措置について提言しているが、彼らは『スポーツ庁の管轄だ』として及び腰だ。
 しかし学校管理下でスポーツ事故が相次いでいる現状に鑑みると、なんとも
歯がゆい限りだ」
と述べました。

 プラムネット株式会社の渡辺直史氏は、未就学児の保育施設が登山を行った際、
4歳児と5歳児それぞれ1名が約3時間にわたって行方不明になるという事態が
発生した際、当該園と自治体から第三者委員会による検討を依頼され、委員として
参加した経験について発表しました。
 同氏は
「重大事故が発生した場合、どうしても責任の所在や過失の有無、法的責任や
賠償責任という話になってしまう。そうなると関係者は口を閉ざし、結果として
情報が開示されず、したがってリスク要因について共有できないという事態に
陥りやすい。『快復可能な傷病』や、命に関わった可能性のある『ヒヤリ・ハット』など、
重大事故に至る一歩手前の段階における検証こそ、子どもの命を守る上で重要だ」
との見解を示し、
「委員が持つ専門性・客観性・公平性が、検証の過程で遺憾なく発揮されるならば、
当事者も含めた垣根のない情報交換の場を作り出すことができる。そしてそこでは、
『誰が』悪いのか?よりも、『何が』事故につながったのか?に光を当てることによって、
再発防止に向けた教訓を導き出すことが可能となる。
 そして生徒や保護者への説明責任は、あくまで学校・園にある」
と述べました。

 日本子ども安全学会を運営している一般社団法人吉川慎之介記念基金の
吉川優子・代表理事は、水遊びの際は必ずライフジャケットを着用するよう
訴える活動を続けています。
http://digital.asahi.com/articles/ASK7V5TS4K7VUBQU01F.html

 グローブライド株式会社の吉川隆氏は、吉川優子さんの活動に賛同して
同基金に子ども用ライフジャケット100着を寄贈すると発表しました。
www.globeride.co.jp

 吉川優子さんは、長男・慎之介くんが12年7月、幼稚園のお泊り保育に
参加した際、川遊び中に流されて死亡した愛媛県西条市にこれを寄付する
との意向を示し、
「事故の記憶が年月とともに風化するのは避けられないかもしれないが、
事故の教訓が風化することはあってはならない」
と述べました。
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201609-6.html

 同学会の第5回大会は18年9月8日、中央大学駿河台記念館で開催されます。
スポンサーサイト

2017年度第2回日体大研修会のお知らせ

[ 2017/09/07 14:25 ]
 日本体育大学スポーツ危機管理学教室が主催する
「学校・部活動における重大事件 ・事故から学ぶ研修会」
を以下の日程にて開催します。

 10月13日(金)18時00分~20時30分
 日体大世田谷キャンパス記念講堂
http://www.nittai.ac.jp/access/index.html

 今回は兵庫県立龍野高女子テニス部熱中症事故、専修大附高
女子バレーボール部熱中症事故、そして愛知県立刈谷工高野球部
パワハラ自死事件の保護者が登壇し、体育教員を目指している同大の
学生および教職員に、自らの体験を伝えます。
 企画立案した南部さおり准教授は
「今年度の本学第2回研修会では、生徒のコンディションに対する顧問の
無思慮によって起きた重大事件・事故の被害者・ご遺族、そしてパワハラ
指導によって死へと追い詰められた高校球児のご遺族からお話し頂き、
将来教員・指導者を目指す学生、この問題に関心を持って下さるすべての
方への熱いメッセージを頂きます」
とコメントしています。

 一般の方も参加できますが、事前申込が必要です。
 お問い合わせ・お申込みは、
日本体育大学 総合スポーツ科学研究センター
TEL:03-5706-0931(担当:中嶋・國嶋)まで。

全国学校事故・事件を語る会、夏の学習会(その3)

[ 2017/08/30 09:40 ]
 2016年8月25日に発生した青森市立中2年生女子(当時)の
自死事案について、同市のいじめ防止対策審議会は17年3月、
調査報告書案を提示した際、「女子生徒には『思春期うつ』の症状があった」
と記載していました。
 しかし、そのように判断した根拠について具体的な説明がなかったため
遺族が反発。事態は紛糾し、結局5月末には審議会の全委員が任期満了
に伴い退任しました。
 現在は新たな審議会を設置する作業が続いていますが、委員の選任は
進んでいません。

 こうした状況について野口善國弁護士(兵庫県弁護士会)は、
「保護者には真実を知る権利があるが、これが担保されていない。
 調査の主体はあくまで遺族であり、学校や教委は調査対象となるべきだが、
主客が逆転してしまっている。これを改めない限り真実は明らかにならない」
と述べました。

 参加者からは、
「調査委は被害者と家族に寄り添うべきだ。
 報告書の記載は、時系列に沿って事実を示してほしい。ことの善悪や是非に
ついての評価はいらない。いつ誰が何をすべきだった、といった反省は
事実を明らかにしたあとのステップだ」
「指導死は、『指導』という概念を免罪符にした教師によるいじめであり、
殺人ではないのか。生徒を『叱る』にはそれなりの根拠があるが、『怒り』は
感情の発露に過ぎず、これが生徒を追い詰め自死に至らしめている」
「スポーツ事故の場合、『指導者は熱心な先生』であると保護者や地域住民が
評価するケースが多い。その結果、あたかも加害者が被害者であるような
世論が形成され、被害者と家族が批判され孤立させられることが多い」
「遺族は『子どもが帰ってこない』ということは痛感している。ならばせめて
『生きた証』がほしい。我が子のいのちを無駄にしてほしくない、教訓として
活かしてほしい、と願っている」
という切実な声が聞かれました。

 内海氏は
「事実解明のレベルやその方法は目的によって異なる。
 目的としては①沈静化するため、②主たる原因を明らかにするため、
③家族の事実を知りたいという願いに答えたり、事故事件の現場対応を行うため、
④再発防止のため、などが考えられが、この際、事実解明のレベルは
①<②<③<④となる。
 調査委は、その目的を④の再発防止としているが、実際に出された報告書では
②のレベルさえクリアできそうにないものがある。沈静化のための調査委と
言われてもしかたがない。
 また調査委はあくまで事実解明のための手段に過ぎないのに、調査委の設置
そのものが目的化しているのではないか。したがって、『調査委を設置しました、
報告書を公表しました』という段階で終わってしまっている。報告書を受けて、
では具体的にどのような策を講じるのか?が最も重要な課題のはずなのに、
報告書は出したが出しっぱなし、というのが現状だ。
 学校や教委が、調査委の提言を受けてどのように対応しているのか?を
監査する組織の設置も必要ではないか」
との見方を示しました。

全国学校事故・事件を語る会、夏の学習会(その2)

[ 2017/08/30 09:21 ]
 学校事故・事件の被害者と、その家族から出された事後対応に関する意見で
共通していたのは
「心からの反省と謝罪の言葉がほしかった」
というものです。

 同会の代表世話人・内海千春氏は中学校教員だった自らの経験を踏まえ、
「学校教育は失敗したらやり直すことが基本だ。それゆえ、やり直すことが
可能な範囲、つまり被害が回復可能な範囲でしか機能しない。
 いじめが被害者の自死など回復が不可能な被害につながった場合、
やり直しはできない。こうしたとき学校は事件に対応できなくなり、加害生徒に
対して反省も謝罪も求めない。
 つまり、『少しいじめれば叱られるが、殺してしまえばなかったことになる』
という結果が生じる。
 これはまぎれもなく非教育的、ないし反教育的な対応であるが、この矛盾について
どう考えればいいのか?という問いに対して、答えを持っていないのが現実だ」
と指摘しました。

 そのうえで、16年3月に文科省が公表した「学校事故対応に関する指針」に、
「被害生徒の保護者の要望があれば、学校設置者が調査委員会を立ち上げて
詳細調査を行う」との記載があることを指摘し、
「学校は調査委に丸投げすることを覚えてしまった。学校が自ら取り組むべき
課題なのに、これから目を背けることができる根拠を与えてしまった」
と批判しています。
http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1369565.htm

 内海氏は
「学校に調査能力はある。保護者からいじめの相談があれば調査を行い、
その結果を逐一報告する。『全体像が明らかになるまで待ってほしい』
などとは言わない。
 わかったことはわかったこと、わからないことはわからないことと明確に
区別して逐次報告するのが常だ。そうしなければ保護者の信頼を担保する
ことができないからだ。
 調査委の設置を待つという名目で時間を空費したり、調査結果を被害者や
遺族に知らせるまでに何カ月もかけるということは被害者や遺族の信頼を
裏切る行為であり、事実を曖昧にし事態を沈静化させるための策略では
ないか、と思っている」
と述べました。

 いじめ自死事件で死亡した生徒の遺族からは
「わたしたちはただ事実を知りたいだけで、加害生徒らに刑事責任や
賠償責任を負わせたいわけではない。しかし反省も謝罪も求めないという
学校の姿勢は、加害生徒から反省と謝罪の機会を奪っていることで、
これが彼らを苦しめる要因にもなっているということを認識すべきだ」
という声があがりました。

 奈良県の公立中で発生したいじめ自死事件について、市が設置した
調査委は「いじめがあったこと、これが生徒の自死の原因であること」を
認める報告書を公表していますが、学校と同市教委は報告書の記載内容を
認めようとしていません。
 したがって、校長や教育長はもとより、加害生徒らからも遺族に対する
反省の表明も謝罪の言葉もないまま、時間だけが経過しています。

 しかし自死した生徒の学年が中学校を卒業する時期を迎え、卒業式
終了後に、担任教諭が中学校生活をまとめたという映像を教室で流したところ、
加害生徒らが「やめて!」と絶叫しパニック応対に陥った、という証言を得ています。
 これは推測でしかありませんが、加害生徒らにしてみれば、「自分たちが
被害生徒に対してやったことは、いじめに相当する」との自覚があるからこそ、
常に後ろめたさを感じているのではないでしょうか?
 だからこそ、「中学校の思い出」としてまとめられた映像に、「被害者が
映っているのではないか?」との疑念が湧き起こり、自責の念にとらわれて
平常心を失ったのではないか、との見方が成立する可能性もあります。
 学校と教委が反省と謝罪の機会を奪い、これが結果として健全な成長を
阻害しているとすれば由々しき問題ですし、けっして事件を過去のものとして
片付けてはいけないと考える所以でもあります。


(この項、つづく)

全国学校事故・事件を語る会、夏の学習会

[ 2017/08/29 22:15 ]
 「全国学校事故・事件を語る会」(代表世話人:内海千春氏・宮脇勝哉氏)が
2017年8月26-27日、神戸市で「学校事故・事件の遺族・被害者が望む事後対応」
について、学習会を開催しました。
 両日で、のべ186人の参加者が全国から集まりました。
 今回の学習会で当事者から出された要望をまとめ、同会は今秋にも文部科学省に
要望書を提出する予定です。

 27日には、部活動でのいじめに遭った大阪府立高3年生男子が、自らの体験に
ついて語りました。
 彼は「いじめ自殺した子たちと同じ地獄を見た」と言い、
「2年生だった15年6月にいじめが始まり、不登校になった。
 いじめは人間の魂を奪うもの。気力もなくなり、ただベッドに横になって天井を見ていた。
 食事も3日に1回、それもゼリーのようなものを飲み込むのが精いっぱいで、1カ月で
体重が8㎏減少した」
と、その凄絶な経験を告白しました。

 そのうえで、
「教員に相談し、人格を否定されていると訴え、体調不良についても説明したが
『それはいじめじゃないと思う』との回答だった。信じていたものが味方ではない、
と思い知らされた。
 ぼくは神の存在は信じないが、悪魔の存在は信じる。
 ぼくがいま生きていられるのは加害生徒や、真剣に相談に乗ってくれなかった
教員に対する怒りや憎しみによるもので、希望によるものではない」
と心情を吐露し、
「当時も『学校に通わなくてもいいよ』と言われたが、それは適切な言葉ではない。
 16歳の子にとって、学校生活は人生のほとんどを占めているのだから、
みんなが登校しているのに自分だけ登校できない、という状況に本能的な
違和感があった。
 だれかに『学校に行くな』と言ってほしかったし、いまいじめに苦しんでいる
子どもたちにも、そう言ってあげてほしい」
と述べました。

 彼の母親によると、およそ半年にわたる期間の記憶が失われており、現在は
回復途上にあるもののフラッシュバックもあり、毎週医師との面談が欠かせない
状況だということです。
 望月彰・愛知県立大教授は
「実は回復途上が最も危険な時期だ。けっして安心できる状況ではない」
と警告しています。

 男子生徒は2年以上登校できない状況が続いていますが、17年度は3年生に
進級し、来春には高校を卒業する見通しで、
「工業デザインを学ぶために進学する希望を持っているが、大学に入学できる
までには少なくとも3-4年はかかると覚悟している」とし、
「地獄は経験した人にしかわからない。この経験を伝えていくことが自分の務め
だと思っている」
と、今後も同会の活動にかかわっていくとの意向を明らかにしました。


(この項、つづく)
プロフィール

heppoko runner

Author:heppoko runner
 子どもは社会の宝です。
 なぜなら20年後、30年後の社会を支えてくれるのは彼ら彼女らであり、彼ら彼女らのいのちや権利を粗雑に扱うということは、すなわち日本の、ひいては人類の未来に対する責任を放棄することです。
 そんな無責任な態度は、断じて許されません。
 子どものいのちと権利を守るために、わたしたちはなにをしなければならないのか?なにをしてはいけないのか?
 いっしょに考えていただきたいと思います。

最新トラックバック