兵庫県立龍野高校テニス部事故を考えるウェブサイト

2007年5月24日、兵庫県立龍野高校テニス部の練習中に倒れ、いまも意識が戻らないリサさん。事故発生とその後の状況について検証し、ともに考えたいと思います。

スポーツ事故根絶に向けて(その12)

[ 2016/06/02 21:42 ]
 朝日新聞の中小路徹・編集委員は、2016年5月28日付同紙スポーツ面の
コラム「縦横無尽」で、スポーツ活動をする子どもを持つ保護者に情報を発信する
スポーツペアレンツジャパン代表の村田一恵さんを取り上げています。

 上記記事によると、

 08年、小学1年だった長男が神奈川県内のサッカー少年団に入った。かつて
米国でトレーナーの勉強をした村田さんは、救急体制の貧弱さに驚いた。
 アイシング用の氷が常備されず、けが直後にはほぼ使われない湿布が
救急箱にあった。夏合宿前には
「毎年、頭痛を訴える子がいます。頭痛薬を持たせて」というメールが流れたが、
大いに疑問だった。「頭痛は熱中症の症状の一つなのに!」

という危機感を背景に、村田さんらスポーツペアレントジャパンは一般の保護者を
対象に安全対策セミナーなどを開催しています。

 こうした活動は、青少年スポーツ安全推進協議会(澤田佳子会長)と軌を一に
するものです。
 中小路氏は15年10月24日付同紙で、澤田さんについて

佳子さんは「重大な後悔」をしている。(長野県松本市の柔道教室で、当時の指導者に
投げられ)けがをした武蔵さんに「放っておけば治る」と指導者が言ったことや、
「水分補給は少なめに」「稽古中はトイレにいくな」という指導に違和感を覚えても、
「スポーツはそんなものか」
とやり過ごしていたことだ。
 「おかしいです」と指摘できる知識と理論が、自らにはなかった。それがあれば
事故が防げたかはわからない。でも、知識があれば、安全な環境作りへ指導者と
話を交えられる。(青少年スポーツ安全推進協議会が)情報発信、知識提供に
活動の重きを置くのは、親たちにも学ぶ機会を持ってほしいという願いからだ。

とも書いています。
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201510.html

 保護者が指導者に意見を具申すれば、たとえそれが正しく、建設的なもので
あっても「モンスターペアレント」扱いされ、「単なるクレーム」として一蹴される
という、たいへん残念な実態があります。
 しかし事故を起こして、いったいだれの得になるというのでしょう?
 松本市の柔道教室の元指導者は、澤田さんが提訴した損害賠償請求訴訟で
賠償責任を認められ、刑事裁判でも業務上過失傷害罪で有罪が確定しています。

 この元指導者に投げられて急性硬膜下血腫を発症した澤田武蔵さんは未来を
奪われ、現代の医学では「障がい者」という範疇を脱することはできません。

 こうした極めて重い現実に鑑みれば、「事故を起こさないこと」の重要性が
よくわかります。
 澤田さんの
「無知はいけないこと。学ぶことが安全につながる」
という言葉を、社会の常識にすることが急務です。
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全国柔道事故被害者の会、全柔連と協議開始

[ 2014/08/02 08:28 ]
 2014年7月31日付朝日新聞は

 全日本柔道連盟は30日、東京・講道館で重大事故の親族らで作る
全国柔道事故被害者の会と初めての協議会を開き、「事故ゼロ」を目指して、
柔道事故総合対策委員会(仮称)を設置することを決めた。
 この日は長野県松本市で当時小学6年生の男児が重い後遺症を負った事故の
実態を母の沢田佳子さんらが報告。被害者の会から「安全な柔道に向けての提案」
として、暴力的指導者の根絶、告発機関および第三者による調査機関の設置など
7項目の要望書が手渡された。協議会は今後も継続していく。
 山下泰裕全柔連副会長は「悲痛な叫びを聞き、胸が締め付けられる思い。
脳振盪を軽視せず、頭を打たなくても起こる加速損傷を関係者すべてに知ってもらう
努力をしていく」と語った。
 被害者の会の村川義弘会長は「まずは母親の声を届けること。きょうはそれは出来た。
いいスタートが切れたと思う。今後は、対策委にオブサーバーとして参加したい、こと
などを要望していく」と話した。

と伝えています。

 宗岡正二・全柔連会長は協議会の冒頭、
「重大事故ゼロの実現に向けて、被害者の会と協力していきたい」
と明言しました。

 協議会は冒頭のみ記者団に公開するかたちで、約1時間40分と当初の予定を
上回って行われました。
 被害者の会の村川会長は協議会終了後の記者会見で、14年3月15日に
沖縄県豊見城市の柔道教室で小3(当時)男子が頭痛を訴えていたにもかかわらず、
指導者が練習を中止しなかったために急性硬膜下血腫を発症する事故が発生した
ことを指摘し、
「被害者の会として、加速損傷とセカンドインパクト・シンドロームの危険性について
繰り返しアピールしてきたが、わたしたちの声が現場の指導者に浸透していなかった
ことが明らかになった。大変ショックだ」と述べました。
 これについて近石康宏・全柔連専務理事は、14年7月24日に柔道事故総合対策委
準備会合を開催したことを明らかにし、
「宗岡会長の諮問委員会として立ち上げたのち、理事会での決議を経て正式に設置する」
と述べました。
 近石氏は柔道事故総合対策委について、既存の医科学委、広報委、大会事業委
などのメンバーのほか有識者も含め15人程度の陣容とするとしたうえで
「医学的知見も重要だが、暴力的な指導やしごきに近い練習が事故につながっている。
指導者の意識改革がなければ、知識があっても無意味だ」とし、
「指導者資格規定の改正作業を進めている。指導者資格剥奪も取り込んで、次回理事会
に諮る」方針を明らかにしました。

 被害者の会メンバーによると、宗岡会長は協議会で
「わたしの在任中に事故ゼロを実現する」
と明言したとのことです。

全国柔道事故被害者の会、声明を発表

[ 2014/05/20 20:39 ]
 2008年5月27日、長野県松本市の柔道教室で小6(当時)の沢田武蔵さんが
指導者だった小島武鎮(たけしげ)被告に投げられ急性硬膜下血腫を発症し、
遷延性意識障害という重篤な後遺症が残った事故について、長野地裁
(伊東顕裁判長)は14年4月30日、禁錮1年執行猶予3年(求刑禁錮1年6カ月)
の有罪判決を言い渡しましたが、これが確定しました。

 全国柔道事故被害者の会(村川義弘会長)は14年5月20日付で声明を
発表しました。
 沢田武蔵さんの母・佳子さんも同日メッセージを公表しました。
 その全文は、同会ホームページをご参照ください。
http://judojiko.net/news/1568.html

 沢田佳子さんは

 不幸にも事故が起きたとき謝罪をする。また、防げる事故を防いでいくという
当たり前のことができる世の中であってほしいです。

と訴えています。

長野地裁、元柔道指導者の刑事責任認める

[ 2014/05/01 21:00 ]
 2014年5月1日付朝日新聞東京本社版は

 長野県松本市の柔道教室で08年5月、当時小学6年生だった沢田武蔵さんが
けがを負い、重い後遺症が残った柔道事故をめぐり、業務上過失傷害罪で強制起訴
された元柔道指導者で柔道整復師の小島武鎮(たけしげ)被告に対する判決が
30日、長野地裁であった。伊東顕(あきら)裁判長は「安全に配慮せず、手加減
せずに投げつけた」と述べ、禁錮1年執行猶予3年(求刑禁錮1年6カ月)の
有罪判決を言い渡した。(中略)
 沢田さんは指導者だった被告に練習で「片襟体落とし」という投げ技をかけられた。
 頭は打たなかったが、強く揺さぶられた影響で急性硬膜下血腫となり、一時
意識不明に。四肢まひの重い後遺症を負った。
 この日の判決はまず、柔道指導者には「技量・体格に配慮しながら、手加減する
注意義務がある」と指摘。「未熟な者が強い力で投げられ、畳に打ちつけられれば、
身体に何らかの障害が発生することは十分に予見可能だ」と述べた。
 沢田さんについて「受け身の習得も十分ではない、発育途上の小学生だった」とした
うえで、「手加減して投げた」などと無罪を訴える被告の主張を検討。保険会社の
依頼で再現した際の映像の中で、被告が強く投げたことを認めていることなどから
「注意義務に反して投げたことは明らか」と認定し、被告には過失責任があると
結論づけた。(中略)
 判決後に記者会見した沢田さんの父博紀さんは「柔道界、スポーツ界が本当に
変わってほしい。指導者がいま一度見直すきっかけになってもらえれば」と語った。
 母佳子さんも「柔道において頭を打たなくても脳損傷が起きることを広めていく
ことが必要」と話した。この日は両親が参加する「全国柔道事故被害者の会」の
メンバーらも法廷で判決に聴き入った。(後略)

と報じています。

 判決について、内田良・名古屋大大学院准教授は中日新聞の取材に
「全国の柔道指導者に重要な意味を持つ画期的な判決だ。技量の未熟な子を強く
投げれば傷害が発生し得ることは、有段者でなくても分かることだ。指導者は今後、
自分たちが刑事責任を問われる可能性があることを十分に自覚し、安全に配慮して
ほしい。今回は学校外での事故だが、教育現場でも事故は昔から多発してきた。
 行きすぎた指導も、教育の名の下に『指導の一環』として片付けられてきた側面が
ある。判決は、教育現場のそうした風潮にも風穴を開けてくれるものだ。教育関係者は、
事故防止に向け、判決の内容を重く受け止めてほしい」と述べています。

 損害賠償請求訴訟で沢田さんの代理人を務めた永田恒治弁護士は
「指導者の刑事責任を認め、被害者が報われる判決を導き出した、検察官役の
指定弁護士の努力に敬意を表する。長野地裁判決は、強化と安全対策は両立しうる
と指摘した、たいへん意義のあるもの」と評価しました。

 「全国柔道事故被害者の会」の村川義弘会長は
「検察は従来、『柔道場で柔道着を着て、柔道技をかけて発生した事故の刑事責任は
問えない』としてきたが、長野検察審査会の決定は『検察の判断が国民の良識とは違う』
ことを表明し、今回の判決はその国民の良識が正しいと判断したもので、その意義は
非常に大きい」と述べました。
 そのうえで14年3月15日、沖縄県豊見城市で小3男子(当時)が柔道の練習中に
倒れ、意識不明の重体になっていることに言及し
「報道によれば、練習中に男児は頭痛を訴えていたという。頭痛を訴えれば即座に
練習を中止すべきだった。にもかかわらず、指導者が練習を継続したことが事故に
つながったのではないかと考えている。全日本柔道連盟発行の『安全指導の手引き』は、
頭痛を訴えたらただちに練習を中止するよう明記している。現場の指導者が全柔連の
ガイドラインを順守していれば、予防できた事故はたくさんある。事故撲滅に向けた
具体的な取り組みについて、全柔連に働きかけていきたい」と表情を引き締めました。

 当ブログ14年4月12日付記事
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201404-6.html
でもお知らせしましたが、大津検察審査会は14年4月9日付で、滋賀県愛荘町立
秦荘中柔道部の元顧問を「起訴相当」と議決しました。
 亡くなった村川康嗣くんの母・弘美さんは
「大津地検には長野地裁判決を重く受け止めてほしい」と強く要望しました。

 損害賠償請求訴訟では村川さんの勝訴が確定していますが、
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201305-5.html
民事裁判とは原告・被告双方の主張を聞き、いずれに分があるかを判定する手続きに
すぎず、事故の全容解明を目的とするものではありません。
 弘美さんは
「『あなたのお子さんのいのちは何千万円です』といわれて、納得する親はいない。
 不可抗力ではなく、指導者の指導法に問題があったことが事故の原因だときちんと
解明してほしい。二度と事故を起こさないことが、息子のいのちを無駄にしないこと」
と述べています。

松本市柔道事故刑事裁判、4月30日に判決

[ 2014/04/05 09:00 ]
 2014年3月20日付読売新聞長野版は

 松本市の柔道教室で2008年5月、小学6年生だった沢田武蔵さんが
指導者に投げ技をかけられ大けがを負った事故で、長野地裁は19日、
業務上過失傷害罪で強制起訴された元指導者小島武鎮(たけしげ)被告
(求刑・禁錮1年6月)の判決公判を、4月30日午後2時半から開くと
発表した。
 公判では、事故の予見可能性の有無が最大の争点となっており、弁護側は
事故を予測することはできなかったとして無罪を主張している。
 検察官役の指定弁護士は公判で、小島被告が持つ柔道整復師の受験
教科には外科学があり、頭部が激しく揺さぶられると、直接衝撃がなくても
脳に損傷が起こる可能性があることが教科書に記載されている点などを挙げ、
小島被告は十分に事故を予測できたと指摘。
 弁護側はこれに対し、外科学の教科書には脳に関する記載がわずかしか
なく、柔道整復師にとって脳外科学はほとんど専門外だったと反論。
「頭をぶつけずに急性硬膜下血腫を引き起こすことは予測できなかった」
と主張している。

と伝えました。

 被告弁護人は「柔道において体格差はさして問題にならない。指導者には、
そうしたことに配慮して指導する義務はない」と主張していました。
 これはスポーツ指導にあるまじき暴論であり、予見可能性について議論する
以前の問題です。

 そして13年11月27日の第5回公判に証人として出廷した正木照夫氏
(元・全日本柔道連盟総務副委員長)が
「技量や体格に劣る相手を指導する際は、力を加減してゆっくり投げる配慮が
必要で、柔道指導者の間では常識」
「指導者は安全配慮義務を負っている。けがをしない、させないことが正しい
柔道だ」
と繰り返し強調したことに鑑みれば、小島被告の指導者としての資質には
大いに疑問がある、と言わざるを得ません。
 スポーツ事故根絶に向けて、長野地裁が情理を尽くした判決を言い渡す
ことを期待してやみません。
プロフィール

heppoko runner

Author:heppoko runner
 子どもは社会の宝です。
 なぜなら20年後、30年後の社会を支えてくれるのは彼ら彼女らであり、彼ら彼女らのいのちや権利を粗雑に扱うということは、すなわち日本の、ひいては人類の未来に対する責任を放棄することです。
 そんな無責任な態度は、断じて許されません。
 子どものいのちと権利を守るために、わたしたちはなにをしなければならないのか?なにをしてはいけないのか?
 いっしょに考えていただきたいと思います。

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