兵庫県立龍野高校テニス部事故を考えるウェブサイト

2007年5月24日、兵庫県立龍野高校テニス部の練習中に倒れ、いまも意識が戻らないリサさん。事故発生とその後の状況について検証し、ともに考えたいと思います。

組体操の危険性について(その4)

[ 2014/10/30 08:50 ]
 2014年10月29日付朝日新聞兵庫版は

 運動会や体育大会でおなじみの組み体操をめぐり、安全対策の強化を求める声が
高まっている。毎年「10段ピラミッド」に挑戦している伊丹市立天王寺川中学校では、
体育教師が指導方法のDVDをつくった。他校にも提供し、教材化に取り組んでいる。
 「組み体操は人間どうしが直接ふれあい、一つの形をつくる体操。お互いを思いやる
心があれば、素晴らしいものができる」。天王寺川中の吉野義郎教諭は自ら作製した
DVDの冒頭、そう呼びかける。(中略)
 ピラミッドの中に入って、下から生徒の体を支える「かすがい」役をおき、周囲には
補助役も数人配置する。崩れたときの身の守り方も教え、重大な事故は起きていない。
 (中略)
 ただ、全国的にみれば、組み体操でけがをする子どもが多いのは事実だ。
 名古屋大の内田良准教授(教育社会学)が、学校で起きたけがの医療費給付を担う
日本スポーツ振興センターの資料を分析したところ、小学校の組み体操での事故は
11年度5976件、12年度6533件を確認した。跳び箱、バスケットボール時の
事故に次ぎ3番目に多かった。
 吉野教諭は「組み体操に危険はある。だからこそ教材化して、正しい指導方法を
学校現場で共有していく必要がある」と話す。

と伝えています。

 同中では12年に生徒が足を骨折したことが明らかになっていますが、これは
「重大な事故」ではないのでしょうか。
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201409-2.html

 14年10月3日に放映された毎日放送「VOICE」で、吉野教諭自身が
「11段ピラミッドはどこも成功させたことがない。このやり方で大丈夫かどうかも
わからない」と認めています。
 なのになぜ「正しい指導方法」などといえるのでしょう?
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201410-6.html

 上記の内田准教授は、組体操の指導において相反するメソッドが併存していることを
指摘し、安全性について早急に検証すべきだと提言しています。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryouchida/20140926-00039416/

 すなわち「吉野メソッド」は、少なくとも現時点において、安全性を担保するうえで
最も有効と立証されたものではありません。
 したがって、「吉野メソッド」の正当性を一方的に主張するのは勇み足でアンフェアと
言わざるを得ませんし、これを独り歩きさせることにはリスクがあります。

 吉野教諭は14年9月25日放映のテレビ朝日「モーニングバード!」で
「そもそもスポーツにはケガがつきもの。組体操だけが特別に危険なわけではない」
と主張しました。
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201409-0.html

 この発言に対し、「全国柔道事故被害者の会」のメンバーからは
「聞き捨てならない。スポーツ事故は命にかかわるおそれがあり、被害者は未来を
奪われることになる。生徒たちにケガをさせないよう策を講じるのが教師の責務だ。
なぜそれがわからないのか」との声が挙がっています。
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組体操の危険性について(その3)

[ 2014/10/09 08:23 ]
 2014年10月2日付毎日新聞「発信箱」で、落合博論説委員が「セニはあるか?」
というコラムを書いています。

 スペインからの独立の是非を問う住民投票の実施を目指すカタルーニャ自治州
には200年以上続く伝統行事がある。「人間の塔(カスティス)」だ。国連教育科学
文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産でもある。
 運動会や体育祭で行われる組み体操(原文ママ)の「タワー(円塔)」に似ている。
研究者の岩瀬裕子さんによると、カスティスには四つのモットーがある。力(フォルサ)、
バランス(エキリブリ)、勇気(バロ)、理性(セニ)で、カタルーニャ人固有の美質を
最もよく表すのがセニだ。
 「これを登ったらけがをする」などと感じたら潔く途中でやめたり、作り直したりする
冷静な判断力のことを言う。参加者は3〜11月の約9カ月間、1日2〜3時間、
週2〜3日の練習を重ねて本番に備える。(中略)


 兵庫県伊丹市立天王寺川中の3年生男子が、14年9月20日の体育大会で
「組体操史上初」となる11段ピラミッドに挑戦しました。
 しかし10月3日放映の毎日放送「VOICE」によると、同中の吉野義郎教諭が
作成した「11段ピラミッドの設計図」に基づいて、「どこにだれを配置するか」を
決定したのは9月17日でした。
http://www.mbs.jp/voice/special/

 上記カスティスが「約9カ月間、1日2〜3時間、週2〜3日の練習を重ねて
本番に備える」のとは、あまりにも大きなギャップがあります。
 中学生に、わずか3日の練習で高さが7m以上にも達する11段ピラミッドを
完成させろというのです。
 しかも吉野教諭は、
「11段ピラミッドはどこも成功させたことがない。このやり方で大丈夫かどうかも
わからない」と認めています。
 三宅良輔・日本体育大教授は、
「運動会や体育祭での発表のために短い練習期間で、成功する確信がないにも
かかわらず挑戦させたりすることには賛同できない」と述べています。
(14年7月19日付毎日新聞東京本社版夕刊)

 体育大会当日は11段ではなく、10段ピラミッドに取り組みました。
 それはメンバーに入っていた教員が練習中にけがをしたため、校長の判断で
11段は断念したということでした。
 しかし吉野教諭は「大きな事故がなく終われたのが一番」としています。
 教員がけがをしたことは、吉野教諭にとって「大きな事故」ではないようです。

 吉野教諭は自らYouTubeに体育大会の映像を投稿していますが、この映像には
10段ピラミッドが1回目は失敗したことは記録されていません。
https://www.youtube.com/watch?v=FUG0mSYGv7w

 毎日新聞の落合論説委員は上記コラムを

 表現性の高い身体活動である組み体操は高さや大きさを競うものではない。
無数の型があり、ピラミッドはそのひとつでしかない。
 「セニ」を欠いて、傷つくのは子どもたちだ。

という一文をもって締めくくっています。

組体操の危険性について(その2)

[ 2014/09/29 20:42 ]
 テレビ朝日「モーニングバード!」は2014年9月25日の放送で、組体操を
取りあげました。
 内田良・名古屋大大学院准教授は、独立行政法人・日本スポーツ振興センターが
まとめただけで、12年度に小学校だけで6533件の事故が発生し、12年度までの
10年間で重篤な後遺障害が残る事案が20件発生していることを示し、
「巨大化をめざすなら組体操はやめた方がいい」と提言しました。

 これに対し、兵庫県伊丹市立天王寺川中の吉野義郎教諭は
「そもそもスポーツにはケガがつきもの。組体操だけが特別に危険なわけではなく
(内田氏の)批判は的外れ」とし、10段ピラミッドに取り組む目的は
「協調性を養い、達成感を得ること」だと主張しました。

 同中ホームページを参照しますと、14年9月20日に行われた体育大会で
10段ピラミッドを成功させたことを自画自賛しています。
http://www.tenn.itami.ed.jp/

 当日、現場を目撃した「全国学校事故・事件を語る会」の西尾裕美さんは
「1回目は、7~8段目から生徒が横滑りで落ちてきた。たまたまそこにいた
サポート要員が受け止めたため事なきを得たが、もし手が届かなかったら
頭から落ちた可能性もあった」と証言しました。
 その後、生徒たちは2回目のトライで成功させましたが
「2回目は体力も落ちているし、もう失敗できないというプレッシャーを感じていた
だろう。痛みがあっても我慢しただろう。重篤な後遺障害が残る可能性があり、
最悪の場合、命にかかわるリスクがあるとしてもやるべきものなのか、
それは許されるものなのか、と思った」
と疑問を呈しています。

 三宅良輔・日本体育大教授は、内田氏の問題提起について
「よく理解できる。正確な知識を持たない指導者が子どもたちの発育を考慮しないで
演技内容を決めたり、運動会や体育祭での発表のために短い練習期間で、
成功する確信がないにもかかわらず挑戦させたりすることには賛同できない。
(中略)
 組み立て体操は徒競走や騎馬戦と異なり、記録更新や勝敗に一喜一憂する
スポーツ的領域ではない。高さや大きさを競う必要はなく、指導者は体の小さな子
などは周辺で別の演技をさせるなど、子どもたちの体格や体力に応じて演技の
構成を工夫してほしい」
と述べています。(14年7月19日付毎日新聞東京本社版夕刊)

 内田氏は、組体操の指導において相反するメソッドが併存していることを指摘し、
安全性について早急に検証すべきだと提言しています。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryouchida/20140926-00039416/

組体操の危険性について

[ 2014/09/19 23:26 ]
 内田良・名古屋大大学院准教授が、組体操の危険性について告発した
リポートが話題になっています。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryouchida/20140916-00039130/

 上記リポートで内田氏が言及している兵庫県伊丹市立天王寺川中学校に
ついて、同校の事情を知る人は内田氏のリポートを読み
「これは放置できないと思って教頭に面会したが、『(指導にあたっている)
吉野先生は組体操のエキスパートなので、安全には十分配慮をしているので
大丈夫です』というそっけない答えだった。しかし、生徒にどれほどの負荷が
かかるか、という内田先生の記事のことは知っておらず、これを読んで
驚いていた。知ったうえでないと安全に配慮しているとはいえない」
とし、
「同校の環境では、生徒は本音ではやりたくないと思っていても言い出せない
のではないか。保護者からは『骨折した生徒もいて、うちの子はとても嫌がって
いる』と聞いている」
と証言しています。

 テレビ東京が2012年9月25日に放映した「ありえへん∞世界」は

ありえへん人間ピラミッド~中学生の汗と涙の奮闘記~

11段を達成するために練習を続ける市立天王寺川中学校の生徒たちだったが、
その思いとは裏腹に練習は失敗が続いた。この様子を見た吉野義郎先生は、
本番前日、11段を諦めることを決断。しかし諦めきれなかった生徒たちは、
先生たちに直談判をしに行き、3回だけ11段の練習をする許可を得た。気持ちを
新たにして再び練習を始めた生徒たちだったが、そのさなか、支え役の生徒が
足を骨折してしまう。このため、生徒たちは本番は10段に挑戦することになった。
http://datazoo.jp/w/%E4%BC%8A%E4%B8%B9%E5%B8%82%E7%AB%8B%E5%A4%A9%E7%8E%8B%E5%AF%BA%E5%B7%9D%E4%B8%AD%E5%AD%A6%E6%A0%A1/12086343

という内容でした。

 12年にはテレビの取材中に骨折事故が発生したことが明らかになっていますし、
今年も生徒が骨折する事故が発生している、との情報が寄せられています。
 しかし吉野教諭はじめ同校教職員は、これらの事故から何らかの教訓を得た
とは思えず、教訓を得ようとしているようにも見えません。
 生徒たちは天王寺川中と吉野教諭の名声を高めるための道具ではありません。

 龍野高でも、リサさんの事故が発生する8カ月前の06年9月、体育祭で行う
組体操の練習中、上部の生徒が落下し重傷を負う事故が発生しました。
 その際、石原元秀校長(当時、現・岡山白陵中高校長、兵庫県上郡町教育委員)は
体育教師を校長室に呼びながら、事故の調査も改善策も指示せず
「今日は組体操の練習するなよ。練習して、また事故が起きたらオレの名前が
新聞に載るやろ」
と怒鳴りつけるだけで、体育教師をあきれさせたということです。

 内田氏は
「市民が直接学校に問題を訴えたにもかかわらず、これに反応しない学校側の
リスク管理の鈍さは一級品だ」とし、
「『吉野先生は組体操のエキスパートなので』との回答は容認できるものではない。
 そもそも1人の生徒に200㎏もの負荷がかかり、7mの高さにまで達する
組体操で、『安全配慮ができている』などという説明が成り立つはずがない」
と批判しています。

保護者の知る権利について(その50)

[ 2014/09/18 08:19 ]
 2014年9月17日付朝日新聞東京本社版は

 学校での事故などで子どもを亡くした親や専門家らでつくる「子ども安全学会」の
初めての大会が7日、東京都内であった。再発防止策を考えようと中心になって
立ち上げたのは東京都小金井市の吉川豊さん、優子さん夫婦。
 2年前に長男慎之介君(当時5)を水の事故で亡くした。7日は慎之介君の誕生日、
小学2年生になっているはずだった。
 「出張に行ってきます」。12年7月、父親の口ぶりをまねた慎之介君は、通っていた
私立幼稚園の約30人の園児らと初めての「お泊まり保育」に出かけた。ひょうきんで
元気な男の子。ピアノを習い始めたばかりだった。
 川遊び中に水かさが増し、慎之介君はほかの園児らと一緒に流された。
約150メートル下流で見つかったが、助からなかった。園側は子どもに浮輪や
ライフジャケットを着けさせていなかった。
 「現場の危機管理意識が薄い中で問題が深刻化している」。吉川さん夫婦の憤りは
消えない。だが一方で、「慎之介のような事故を繰り返さず、予防につなげたい」と願う。
(中略)
 文科省は事件や事故が起きた際の学校の対応についても指針を作成する方針で、
5月に有識者会議を立ち上げて議論している。01年の大阪教育大付属池田小学校
(大阪府池田市)での殺傷事件の遺族も参加し、学校がどのような事後対応をして
きたか調査している。

と報じています。

 14年9月8日、岩手県花巻市の保育園で川下り中、手作りのいかだが転覆し
5歳の男児が亡くなるという事故が起きました。
 この保育園も子どもたちにライフジャケットを着けさせていませんでした。
 吉川優子さんは
「慎之介が加茂川で溺死したのは2年前です。この間、繰り返されないように、
その思いを持って事件と向き合い声をあげ続けていますが情報が全く共有されない、
活かされない現実を、再び、突き付けられました。防げた事故、守れた命です」
と、その悲痛な胸のうちを語っています。
http://eclairer.org/category/document/#post-1886

 小佐井良太・愛媛大准教授は
「組織の体面を優先し、事態の沈静化を最優先とする教育組織の閉鎖性が、
子どもの安全に対する誠実さを欠くことにつながっている」
と指摘していますが、「組織の体面を優先し、事態の沈静化を図ってきた」のは
龍野高と兵庫県もまったく同じです。
 リサさんの事故について調査せず、「原因を究明し、二度と同様の事故が起きない
ようにしてほしい」という両親の願いにも耳を貸さず、「なかったことにしてしまおう」
という不誠実きわまりない態度は、到底看過できるものではありません。
 文科省の有識者会議では、龍野高と兵庫県の事後対応について精緻に検証
してほしい、と切に願うところです。
プロフィール

heppoko runner

Author:heppoko runner
 子どもは社会の宝です。
 なぜなら20年後、30年後の社会を支えてくれるのは彼ら彼女らであり、彼ら彼女らのいのちや権利を粗雑に扱うということは、すなわち日本の、ひいては人類の未来に対する責任を放棄することです。
 そんな無責任な態度は、断じて許されません。
 子どものいのちと権利を守るために、わたしたちはなにをしなければならないのか?なにをしてはいけないのか?
 いっしょに考えていただきたいと思います。

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