兵庫県立龍野高校テニス部事故を考えるウェブサイト

2007年5月24日、兵庫県立龍野高校テニス部の練習中に倒れ、いまも意識が戻らないリサさん。事故発生とその後の状況について検証し、ともに考えたいと思います。

スポーツ事故根絶に向けて(その2)

[ 2013/11/24 19:48 ]
 2013年11月21日付毎日新聞「発信箱」で、落合博論説委員が

 学校の運動部活動における指導者から生徒への「体罰(暴力)」が絶えない。
 先日は大阪府立高校の男子バスケットボール部の男性顧問が2人の部員を
蹴ったり、たたいたりして減給処分になった。この顧問は、「体罰撲滅」を
訴え続けている元プロ野球選手、桑田真澄さんの講演を聴く研修会に出席した
後に問題の行為を繰り返していた。
 被害者であるはずの生徒の意識にも揺らぎはないようだ。
 ある高校の先生は悩んでいる。最近、クラスで「体罰」に関するアンケートを
実施したところ3分の2の生徒が「必要」と回答したことに驚いた。
 この先生から「どう評価したらいいのか」と打ち明けられ、答えに窮した。
 指導者から暴力を受けていた17歳の男子バスケット部員が昨年末、
自ら命を絶った。それでも学校のスポーツ現場から暴力はなくならない。
 これはもう部活の「裏文化」と言うしかない。(後略)

と書いています。

 11年6月、当時高2の次男が野球部監督の日常的な暴力に嫌気がさし、
退部を申し出たものの認められず、監督からの呼び出しを受けた2日後に
自殺した山田優美子さんは、部員の保護者から
「子どもは殴られて強くなるもの、と言われた」と証言しています。
 そのうえで
「こうした意識が『暴行ではなく指導の一環』とする学校側の主張に
お墨付きを与えるものになっている。『殴る指導は指導ではない』との
見方に賛同する声は非常に少ない。保護者にも体罰を容認する意識が
蔓延している。なんとしても方向転換を図りたい」
と述べています。

 「全国柔道事故被害者の会」の村川義弘会長は
「なぜスポーツ指導の現場から暴力が根絶できないかといえば、わたしたちが
『スポーツ指導とはそういうもの』と受けとめてきたからで、わたしたちにも
責任がある。指導者はもとより、社会全体の意識改革が必要だ」
と訴えています。

 そして内田宏明・日本社会事業大専任講師は、『教育と医学』
(慶應義塾大学出版会)13年8月号で
「部活動の顧問は、どの生徒をレギュラーにするか決定的な力を有している。
 あるいはスポーツ推薦による進学にも大きな影響力を持っているであろう。
 わが子にとって不利にならないよう体罰を容認し、体罰を隠ぺいすることは
結局は暴力を肯定する誤った人格形成をわが子に強いることだということを
保護者も深く認識しなければならない」
と指摘しています。
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保護者の知る権利について(その38)

[ 2013/06/10 09:34 ]
 2013年6月9日付朝日新聞東京本社版「声」に

 医療事故の真相を調査する第三者機関が創設される見通しとなった。
 ただ、第三者機関を設けたうえで、院内事故調査を優先する仕組みが
気になる。病院の自浄能力に期待してのことなのだろうか。
 遺族は、従来の病院の自浄能力に対して不信感を抱いているのでは
ないだろうか。訴訟は、説明不足や不遜な対応などに対する遺族の不満や
不信の表れであるといえよう。
 だが、多くの遺族は病院の責任追及を考えているわけではないだろう。
 公正で客観的な説明による真相や真実を知りたいと強く望んでいるのである。
 真実が明かされ、不満や不信が取り除かれれば感情のもつれも生じないだろう。
 一方、不幸にして医療過誤に遭遇した医師たちもまた、組織と個人の間で
苦しんでいると聞く。
 医療に携わる人と患者、遺族という人間同士、互いに人としての心情に触れ、
話し合う中で双方が納得できる結論に至ると信じたい。
 この意義深い重要な制度を遺族の心に添う形でいかして、今後の医療活動の
改善に役立ててほしいと切に願う。

という投書が掲載されています。

 「病院」を「学校」に、「医師」を「教師」に読み換えれば、学校事故・事件を
めぐる状況と合致します。
 そして「説明不足や不遜な対応」は、まさに石原元秀・龍野高校長(当時、
現・岡山白陵中高校長、兵庫県上郡町教育委員)そのものです。

 リサさんのご両親は、学校管理下で行われていた部活動の練習中に発生した
事故について「公正で客観的な説明」を求め、「真相や真実を知りたい」と望み、
「二度と事故を起こさないでほしい」と願っているにすぎません。

 にもかかわらず石原氏と兵庫県教育委員会は、その声に耳を貸そうとせず、
今日に至るまで6年以上も不誠実な対応を繰り返しています。
 そうした態度がリサさんとご両親をどれほど傷つけ、苦しめているか。
 しかし石原氏も兵庫県教委も事実から目をそむけ、想像しようともしていません。
 したがって自浄能力など期待できません。
 井戸敏三・兵庫県知事は、こうした状況を放置するのでしょうか?

全国学校事故・事件を語る会シンポジウム

[ 2013/06/04 06:54 ]
 全国学校事故・事件を語る会は2013年6月2日、神戸市でシンポジウム
「第三者委員会のあるべき姿を問う」を開催しました。
 全国各地から約120人、1日の交流会と合わせれば2日間で延べ200人が
参加する盛会になりました。
 参加者が多いということは学校関連で発生している事故・事件が多いという
ことの証左ですが、しかし学校や教委の圧力に屈しないという姿勢を示している
ことでもあります。
 また弁護士や研究者のほか、多くの報道陣が取材に詰めかけたという事実は、
この問題に対する関心の高さを示すものでもあります。

 同会の代表世話人・内海千春氏は「第三者委員会が危ない!」と題して
基調提案を行いました。
 内海氏は「第三者委は事故・事件の真相を究明するための手段に過ぎない」
と指摘し、第三者委を設置する場合には
「目的と条件を明確化する必要があり、報告書の記載内容をいかに評価するか
という視点が不可欠」
だと述べました。
 そのうえで群馬県桐生市、鹿児島県出水市など、第三者委を設置しながら
委員の氏名も公表せず、生徒を対象に実施したアンケートも開示しないなど
学校や教委の主張にお墨付きを与えるものにすぎなかった事案を例示し、
「再発防止という目的に資するものではなく、学校関係者の責任を回避する
ものに堕してしまっている」
との危機感を表明しました。

 1999年7月、当時中1の長男をラグビー部の練習中に熱射病による
多臓器不全で亡くした宮脇啓子さんは、
「保護者は『どうしてこんなことに?』と事故が発生するに至った機序について
知りたいと思うが、学校は『これからどうしよう』と事態の収拾と沈静化に
全力をあげている。まったく話がかみ合わない」
と述べました。
 宮脇さんは、学校関係者が風説を流布したことにともなう誹謗中傷に見舞われ、
周囲からも孤立させられました。
 そんななか、兵庫県川西市の子どもの人権オンブズパーソンに申し立てた結果、
「オンブズパーソンが顧問教諭の不適切な指導を立証する『勧告および意見表明』を
公表してくれたことで、顔を上げて生きられるようになった」
と、オンブズパーソン制度の実績を高く評価し、
「これが特定の地域の特別な事例にとどまってはいけない。全国に広めてほしい。
事実解明のない再発防止などありえない。息子のいのちを無駄にしないためにも、
二度と事故を繰り返さないでほしい」
と訴えました。

 内田良・名古屋大学大学院准教授は、
「スクールカウンセラーが、『スクールのためのカウンセラー』になってしまっている
例があまりにも多い。生徒たちの心理的負担を軽減するという名目で、
保護者を学校から遮断するためのツールにされてしまっている」
と批判しました。

 野口善國弁護士(元・兵庫県弁護士会子どもの権利委員長)は、
「第三者委は、被害者の権利を回復し人権を擁護すべきものであって、人権侵害を防ぐ
という視点に立って設置運営すべきものだ。公正性を担保することが不可欠で、
弁護士会としても全国ネットワークを構築することが必要だと痛感している」
と述べました。

全国柔道事故被害者の会、シンポジウムを開催

[ 2013/05/29 08:30 ]
 全国柔道事故被害者の会は2013年5月26日、第6回シンポジウム
「学校安全とスポーツ指導の在り方」を長野県松本市で開催しました。

 内田良・名古屋大学大学院准教授は、指導者が経験知に依拠することの
リスクについて強調し、
「医学・運動生理学など科学的な知識はアップデートされ、最新の知見を
身につけることが可能だ。しかし経験知は十年一日で、更新される
ことはない。科学的な指導メソッドを確立すべきだ」
と提言しました。
 さらにスポーツ事故に関する情報を公表し、これを集約し分析する
プロセスが機能していないことが、学校でのスポーツ事故を繰り返し
発生させている要因だと指摘し
「当事者の訴えに耳を傾けず、社会的な問題として事故情報を共有する
ことなく放置してきたことが事故の再発を招いている。だからこそ
データを開示して可視化する必要がある」
と強調しました。

 京都成章高校のスポーツアドバイザー、中村周平氏は、自身が高校時代
ラグビー部の練習中事故に遭い、頸髄損傷で首から下の感覚を失った
経験について語りました。
 中村氏は
「事故に遭った生徒と保護者が学校に真相解明を求めたら、加害・被害の
関係が発生し、感情的な対立を生むことになる。これが事故当事者の孤立に
つながり、結果として原因究明と再発防止を困難にしている」
として、中立な第三者が調査を行うことの重要性を訴えました。

 鈴木知幸・順天堂大学客員教授(日本スポーツ法学会監事)は、
刑事訴訟法第239条2項の
「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、
告発をしなければならない」
との規定に着目し、校長が指導者に不適切な指導があったことを認識していた
としても、これを告発しなかった自らの責任が問われることになるため
「不適切な指導はなかった、と公表せざるを得なくなる」
と指摘しました。
 そのうえで、
「スポーツ指導とは本来、リスペクトと信頼に基づく教育活動でなければ
ならないが、学校はガバナンスやコンプライアンスに関する意識が乏しく、
隠蔽体質が蔓延しやすい。指導者に対する指導体制の強化が急務だ」
と述べました。

 溝口紀子・静岡文化芸術大学准教授は、
「わが国スポーツ界は幼児期から強化育成に重点を置き、勝利至上主義が
広まっている。このためスポーツは楽しいものという意識が乏しく、
安全性を軽視する傾向が強い」
と述べました。
 そのうえで
「選手は指導者の弟子でも秘書でもない。私物化してはいけない。
 指導者には、自らをアップデートして選手に歩み寄り、選手の意見を
傾聴することが求められる。今後はすべての競技において安全指針を確立し、
これをもとに普及強化を推進していかなければならない」
と述べました。

保護者の知る権利について(その35)

[ 2013/04/01 12:18 ]
 2013年3月29日付朝日新聞兵庫版は

 川西市で昨年9月に自殺した県立高校2年の男子生徒(17)が
いじめを受けていた問題で、市の第三者機関「子どもの人権
オンブズパーソン」は28日、調査報告書をまとめた。
 いじめ行為が直接自殺に結びついたとまで判断できないと
しながらも、「一方的ないじめを受け続けた状況や、学校での
人間関係が自殺の原因となった可能性は極めて高い」と結論づけた。
(中略)
 学校がいじめ行為を把握していなかったことや、生徒が担任以外
の教諭とほとんど接点がなかったことを挙げ、「問題行動の予兆や
変化への感度が十分でなく、気軽に相談できる信頼関係を築くこと
ができていなかった」とした。
 さらに、自殺後に「在校生に『不慮の事故』と伝えたい」と打診
したことや、いじめの可能性についての説明が後手に回ったこと
などを踏まえ、初期対応に重大な問題があり、遺族に不信感を
抱かせたとした。(中略)
 オンブズパーソンから説明を受けた遺族は「調査結果は学校生活に
自殺の原因があったことを認め、いじめの背景にも触れており、
満足している」と話した。

と伝えました。

 これについて、NPO法人・ジェントルハートプロジェクトの
大貫隆志理事は
「ご遺族が、心から満足しておられるわけではもちろんないだろう。
しかし遺族は事実を知ることで、初めてわが子の死を受け入れられる。
オンブズパーソンが果たした役割は大きい」
と評価しました。


 また13年3月30日付朝日新聞東京本社版夕刊は

 東京都品川区の区立中学で、いじめを受けていた1年の男子生徒
(12)が自ら命を絶ってから、半年が過ぎた。一人息子を亡くした
父親(41)が、現在の心情を語った――。(中略)
 自殺後、学校の対応窓口は副校長に一本化された。
 「情報はすべて区教委か副校長を通じ、間接的に伝えられます。
担任や生徒らから息子の楽しい思い出を聞くこともできません」
 区教委の調査対策委員会は昨年11月、いじめが「自殺の誘因」
だったとする報告書をまとめ、事実上、調査を終えた。
 暴力をふるったのは6人、「きもい」などと言葉でいじめたのは28人。
加害生徒や保護者からの謝罪は一切ないという。(中略)
 1月31日、警察に暴行容疑で被害届を出した。この日、大津市で
中2男子がいじめられて自殺した問題の調査委が報告書を市長に提出。
委員が生徒らに延べ95時間の聞き取りをし、調査は8カ月に
及んでいた。
 「こちらの調査委は1カ月に5回集まっただけ。私も委員でしたが、
区教委の資料を追認するばかりで独自調査はなかった。悩んだ末、
警察を頼りました」
(中略)
 生徒の部屋は生前のままにしている。愛用のデジカメ、サッカーボール、
壁には車のカレンダー……。
 「ゴミ箱の中身もあの日のまま。片付けると息子の存在が消えちゃう
ような気がして。
 先日、息子の時計を触っていたら『おはよう、今日も学校頑張ろう』
と息子の声が聞こえました。アラームに録音していたんですね。
 自分を『がんばれ』と鼓舞していたのかと思い、泣けてきました」
 3月の終業式で、校長は全校生徒に「いじめをなくす努力を続けましょう」
と呼びかけた。
 取材に対し、「生徒にとって学校が居づらい状況だったこと、守って
あげられなかったことについては申し訳ないと思うし、何度もそう伝えた。
ただ、報告書にも、いじめが自殺の直接の原因とは書かれていない」
と話した。(後略)

と報じています。

 大貫氏は、「片付けると息子の存在が消えちゃうような気が」する
という父親の気持ちがよくわかる、としたうえで
「学校と品川区教委の対応は遺族の不信感を招くだけ。ましてや大津市の
調査報告が公表されたことを知った遺族には、『なぜ自分たちはなにも
知らされないのか?』という、やるせなさが募るばかりだ」
と指摘しました。
 そのうえで
「学校と区教委は沈静化に奔走しているが、これが結果として暴言を口にし、
暴力をふるった生徒たちから反省する機会を奪っている、ということに
気づいていない。まったく教育的ではない」
と厳しく批判しています。
プロフィール

heppoko runner

Author:heppoko runner
 子どもは社会の宝です。
 なぜなら20年後、30年後の社会を支えてくれるのは彼ら彼女らであり、彼ら彼女らのいのちや権利を粗雑に扱うということは、すなわち日本の、ひいては人類の未来に対する責任を放棄することです。
 そんな無責任な態度は、断じて許されません。
 子どものいのちと権利を守るために、わたしたちはなにをしなければならないのか?なにをしてはいけないのか?
 いっしょに考えていただきたいと思います。

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