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兵庫県立龍野高校テニス部事故を考えるウェブサイト

2007年5月24日、兵庫県立龍野高校テニス部の練習中に倒れ、いまも意識が戻らないリサさん。事故発生とその後の状況について検証し、ともに考えたいと思います。

全国学校事故・事件を語る会、シンポジウムを開催

[ 2023/09/19 12:17 ]
 2023年9月17日、「全国学校事故・事件を語る会」は
神戸市内でシンポジウムを開催しました。
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20230918/2000077983.html

 同会の代表世話人・内海千春氏は、近年全国各地で
設置されている第三者調査委員会について、
「その目的はなんなのか?再発防止が目的であれば、
被害者と学校が対立することはないはずだ。
 しかし責任論を持ち出すことで、両者の対立が先鋭化している」
という問題意識を明らかにしました。

 そのうえで、兵庫県立川西明峰高校で発生したいじめ自死事件
に言及し、
「両親が求めていたのは子どもが亡くなった原因を明らかにすることだ。
だから神戸地裁判決が、被告・兵庫県に対する損害賠償請求に
ついては棄却したものの、いじめと自死の事実的因果関係を認めた
ことに満足し、控訴はしなかった」
「両親は、この判決をもとに、学校が作成した事故報告書の記載内容に
不備があるとして、これを訂正させた」
と述べ、提訴の目的は賠償金を受け取ることにあるのではなく、
子どもと家族の名誉回復にあることを指摘しました。

 さらに内海氏は、調査委が報告書をまとめる際の姿勢について、
「亡くなったり、重篤な後遺障害に苦しんでいる子どもについて、
委員には『絶対に間違いがあってはいけない、というおそれ』が
感じられない」
「委員は『公正中立』というが、それはなんなのか?子どもを
大切に思い、子どもに寄り添う姿勢を示すことが『公正中立』だ」
と強調しました。

 一般社団法人「ここから未来」の代表理事・大貫隆志氏も、
自らが調査委員を務めた経験に基づき、
「『公正中立』というのはトリックワード」
とし、その理由として
「まず被害者は被害に遭っている、ということを忘れてはいけない」
「学校側は圧倒的に多くの情報を持っていて、しかもそれを
被害者側には開示しない」
「委員に選任されるのは医師や弁護士、学識経験者が多いが、
彼らは必ずしも学校事故・事件の専門家ではない」
ことをあげたうえで、
「委員が被害者側に相当に加担しないと、両者はイーブンな関係
にはならない。こうした状況を放置したままでは、まっとうな調査は
スタートできない、と断言できる」
と述べました。
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龍野高校の対応を検証する(その16)

[ 2023/05/12 09:05 ]
  2023年5月7日21時00分から放映された、NHKスペシャル
「いのちを守る学校に 調査報告“学校事故”」
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/N5Q76W31WY/
の関連記事が、「NHKみんなでプラス」に掲載されています。
https://www.nhk.or.jp/minplus/0012/topic036.html

 このなかで紹介されている、兵庫県川西市立中1年生だった
宮脇健斗くんが、ラグビー部の練習中に熱中症による多臓器不全で
亡くなった事故に関しては、「川西市子どもの人権オンブズパーソン」が
調査し、報告書をまとめたことで顧問教諭(当時)のきわめて不適切な
指導が明らかになり、刑事事件として立件されました。
 しかしこれは残念なことに、「たまたま川西市が条例を定めていたから」
と、いわざるを得ないのが現状です。

 兵庫県には同様の制度はありません。
 したがって、龍野高テニス部事故においては、NHKスペシャルで
梨沙さんの父親が証言したとおり、石原元秀校長(同)が
保護者に示した事故報告書はA4用紙1枚の、簡略というよりは
空疎な内容のものにすぎません。
 そしてこれは兵庫県教育委員会に提出するために作成したもの
であり、保護者に対する説明を目的としたものではありません。
 しかし石原氏は、
「これで保護者に対する調査報告義務は果たした」
と切り捨て、そのうえ熱中症で倒れ、遷延性意識障害という
重篤な後遺障害に見舞われた梨沙さんと、保護者の名誉を
傷つける発言を繰り返したことは、断じて看過できません。

 兵庫県教委も石原氏の姿勢に追随し、裁判の審理において
「保護者が調査しているのだから、龍野高および兵庫県教委が
あらためて調査する必要はない」
という当事者意識皆無の、無責任きわまりない主張をしたことは、
当ブログでも繰り返し指摘してきました。
 なお、こうした石原氏らの主張は大阪高裁判決が一蹴し、
最高裁もこれを支持して確定しています。

 という現状に鑑みれば、上記「NHKみんなでプラス」で
吉川優子さんが指摘しているように、
「国の運輸安全委員会のように、事故が起きたら専門的知識をもった
調査官が現場に急行して調査にあたる、そんな仕組み」
が、なんとしても必要でしょう。

 なぜならば、宮脇さんの事案では学校設置者は川西市、
梨沙さんの事案では兵庫県、吉川さんの事案では
学校法人ロザリオ学園であり、自治体ごとの対応に委ねていては、
居住地や在籍している学校園の設置者によって、対応に差が出て
しまうからです。
 これでは「法の下の平等」が保障されないことになります。
 したがって、内田良・名古屋大学教授のいうように
「国こそが主導して行うべきで、国だけができること」
であり、岸田文雄首相が23年3月17日の記者会見で、
「子どもファースト社会の実現は社会全体の課題」
と言い切っている以上、政府と国会の責任において
早急に取り組むべき課題です。

 なお、龍野高の対応について、同高の卒業生からは
「恥ずかしい」という声があがっています。

NHKスペシャルのお知らせ

[ 2023/05/01 21:45 ]
 2023年5月7日21時00分から放映される、NHKスペシャル
「いのちを守る学校に 調査報告“学校事故”」
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/N5Q76W31WY/
では、リサさんの両親も取材に応じています。

 ぜひご覧ください。

龍野高校の対応を検証する(その15)

[ 2023/04/12 06:42 ]
 2011年6月、名古屋市立向陽高校柔道部の練習中、1年生だった
倉田総嗣さんが急性硬膜下血腫を発症し、翌7月に亡くなるという
事故が発生したことは、当ブログでも繰り返しご紹介してきました。
 事故発生時に教頭だった加藤裕司氏が、当時の校長とともに
倉田さんと保護者にどのように向き合ってきたか。
 さらに加藤氏が21年度、校長として同校に戻ってからも、
事故を再発させないため、どのような取り組みを続けてきたかを、
23年4月9日付朝日新聞が報じています。

 「学校で起きたことはすべて学校の責任です。本当に申し訳ございません」
 これが、倉田さんが緊急搬送された病院で、保護者に対して発した
校長の第一声でした。
 加藤氏以下同高の教職員、そして教育長以下名古屋市教育委員会の
職員は、一貫してぶれることなく校長の姿勢を踏襲し、市教委は
事故調査委員会を設置して報告書をまとめ、これを公表しました。

 朝日新聞の氏岡真弓・編集委員は上記記事を、

 総嗣さんの母の久子さんは話す。「遺族が願うのは、我が子の死が、
他の子どもの命を守ることに生かされること。システムがいわば
『向陽モデル』としてできていくのを見ていて、よくここまで考えて
くださったと思った」
 加藤さんは語る。「経験は風化するが、システムは時を超えて
継続性がある」。
 この3月で定年退職したが、後に続く教職員にシステムをよりよい
ものへと変えていってほしいと願う。
 そして他の学校にも広がり、生徒の命を救うことができたらと
思っている。

と締めくくっています。

 お子さんが亡くなっているわけですから、保護者の納得を得ることは
難しいといわざるを得ません。
 しかし2年次、3年次のクラス名簿にも「倉田総嗣」の名前を掲載し、
体育祭や文化祭について案内し、修学旅行のしおりを手渡し、
卒業アルバムも卒業証書も、同期生たちと同じように扱ったことで、
少なくとも保護者の理解は得られました。

 これまた繰り返しになりますが、向陽高および名古屋市教委に
できることが、なぜ龍野高および兵庫県教委にできないのでしょう?
 一点指摘するとすれば、向陽高および名古屋市教委にあって、
龍野高および兵庫県教委にないもの。
 それは生徒に対する愛情であり、保護者に対する誠意です。

石巻市立大川小、裁判をめぐる映画について

[ 2023/03/08 22:45 ]
 今年も3月11日を迎えます。
 東日本大震災による津波で、74人の児童と10人の教職員が
犠牲になった宮城県石巻市立大川小学校。
 映画「『生きる』大川小学校 津波裁判を闘った人たち」
(寺田和弘監督)が、公開中です。

 裁判は、亡くなった子どもたちの保護者からなる原告の
勝訴で終結しました。
 しかし亀山紘市長、境直彦教育長(いずれも当時)以下、
同市と同市教育委員会は、だれを、なにを守ろうとしたのか?
 それはなぜか?
 彼らの所期の目的は達成できたのか?
 それらの疑問は、いまも解明できないまま。
 そして地域住民や関係者の分断は修復できないまま、
今日に至っています。
 まさに、「事故が起こって幸せになる人はいない」
ということを、あらためて痛感します。

 一般社団法人ここから未来(cocomirai.org)の
篠原真紀理事は2023年3月7日。
 K’s cinemaでの上映後、アフタートークに臨みました。
 篠原さんは、本作にも登場する遺族たちと被災直後から
交流しており、毎年3月11日は大川小に足を運んでいましたが、
コロナ禍の影響により3年間、現地に行けなかったとしたうえで
「今年は4年ぶりに大川小で3月11日を迎える予定だ」
と述べました。

 民事裁判は挙証責任が原告にあります。
 すなわち、大津波警報が発出されてから
「避難するのに必要な時間も情報も方法も場所もあったのに、
なぜ先生たちは子どもたちを校庭にとどまらせたのか?」
「避難していれば子どもたちは亡くならずにすんだのか?」
という疑問を保護者たち自身が解明しなければならないのです。

 「なぜ避難しなかったのか?」は、被告・石巻市と宮城県が
情報を隠蔽しているため、いまも謎のままですが、
「避難していれば子どもたちは助かった」と仙台高裁は認め、
最高裁も県と市の上告を棄却しました。

 篠原さんは
「亡くなった子どもたちには、『お父さんお母さんたちが、
あなたたちに代わって証明してくれたよ。
 ほんとうにがんばってくれたよ』と、言ってあげたい」
と涙をこらえながら話しました。

 篠原さん自身、10年に川崎市立中学校3年生だった
次男がいじめ自死した遺族ですが、同市教委が設置した
調査委員会の委員が
「息子が好きだった本を読み、音楽を聴き、彼の胸中に
迫ろうと一生懸命になってくれて、腑に落ちる調査報告書を
作成してくれた」
とし、同委員とはいまも良好な関係にあるといいます。

 学校をめぐる事故・事件が発生すること自体、不幸なことです。
 しかし学校や行政の事後対応によって、被害者や遺族の思いが
多少なりとも救われることもあれば、とてつもなく深い心の傷を
負わされることもあります。
 当ブログでも繰り返し紹介してきましたが、さいたま市、名古屋市、
そして川崎市は稀有な例です。
 これらを、「たまたまいい人にめぐりあえたから」で、
すませてよいのでしょうか?
プロフィール

heppoko runner

Author:heppoko runner
 子どもは社会の宝です。
 なぜなら20年後、30年後の社会を支えてくれるのは彼ら彼女らであり、彼ら彼女らのいのちや権利を粗雑に扱うということは、すなわち日本の、ひいては人類の未来に対する責任を放棄することです。
 そんな無責任な態度は、断じて許されません。
 子どものいのちと権利を守るために、わたしたちはなにをしなければならないのか?なにをしてはいけないのか?
 いっしょに考えていただきたいと思います。

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