兵庫県立龍野高校テニス部事故を考えるウェブサイト

2007年5月24日、兵庫県立龍野高校テニス部の練習中に倒れ、いまも意識が戻らないリサさん。事故発生とその後の状況について検証し、ともに考えたいと思います。

大阪地裁、障害者スポーツクラブ死亡事故でコーチの責任認める

[ 2017/06/25 22:23 ]
 2013年8月24日、大阪市の障害者スポーツクラブでの水泳練習中に死亡した
国本考太さん(当時24歳)の両親が、クラブを運営していたNPO法人と女性コーチを
提訴していた損害賠償請求訴訟で、大阪地裁(山地修裁判長)は17年6月23日、
コーチに注意義務違反があったと認め被告に770万円を支払うよう命じる判決を
言い渡しました。
 当初は同地裁1008号法廷での判決言い渡しが予定されていましたが、
直前になって傍聴席が91席ある202号法廷に変更されました。
 これは、本件に対する社会的な関心が高いことに裁判所が配慮した形跡が
うかがえるものです。

 判決は熱中症が死因だと認めたうえで、女性コーチが熱中症の発症を予防する
ための措置を講じてはいなかったとし、
「コーチの不適切な行為が考太さんの命を奪ったといっても過言ではない」
との見方を示しました。
 しかし考太さんが熱中症を発症したことと、考太さんが死亡したことの
因果関係については明確には認めていません。

 すなわちコーチには注意義務違反があったと認定し、注意義務を適切に果たして
いたならば考太さんの死は回避できた可能性は高い、との見方を示しながら、
熱中症と考太さんが死亡したという事実との因果関係については明確な判断を
留保しており、矛盾があります。
 両親は
「『あの日の練習に参加していなければ、考太が亡くなることはなかった』という
思いが私たちの原点だ。あくまで一部勝訴に過ぎず、私たちの主張が認められて
いないので控訴する。この判決で納得することはできない」
と述べています。

 「全国学校事故・事件を語る会」の代表世話人・宮脇勝哉氏は、考太さんに
てんかんの既往症があったことを指摘し、
「私はかつて特別支援学校で教員を務めていたが、てんかんの既往症がある
子どもが水泳の授業中に発作を起こさないという保証はない。したがって両手両足
にフロートをつけて、教員がプールに入って常に子どもの体を支えているというのが
教育現場では常識だ。考太さんについて、必ずしも同列に論じるわけにはいかない
かもしれないが、女性コーチは水着にも着替えずプールサイドの椅子に座っていた
と聞いている。緊急時対応の心構えができていなかったという意味において、
障害者スポーツの指導者としてはきわめて不適格だ」
と批判しています。
 また障害者スポーツに長くかかわってきた塩浜ひろみ氏は、事故当日の練習
内容があまりにも過酷だと指摘したうえで、
「考太さんのように軽度の知的障害がある人は、コーチの指示を完遂しようとし、
サボる・怠けるという発想がない。こうした特性を理解していなければ、障害者
スポーツの指導者としての資格を備えていないと言わざるを得ない。彼女が
このままコーチを続ければ、第2・第3の考太さんを生むリスクが高い」
と警鐘を鳴らし、大阪地裁判決についても
「裁判所は知識不足。もっと踏み込んでほしかった」
と述べました。

 両親は
「水泳中に熱中症を発症するという事実は、まだ社会的に十分に認識されている
とはいえない。この判決を教訓に、二度と同じような事故を起こさないでほしい」
と訴えています。

 なお本件につきましては、『体育科教育』(大修館書店)17年7月号に
南部さおり・日体大准教授が寄稿していますし、
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201704-1.html
も併せてご参照いただけましたら幸いです。
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世田谷区立小組み体操事故、第2回口頭弁論

[ 2017/06/16 06:48 ]
 2014年4月14日、組み体操の練習中に発生した事故で脳脊髄液減少症を
発症した東京都世田谷区立武蔵丘小6年生(当時)男子と両親が、担任の
男性教諭(同)と世田谷区に損害賠償を求めている裁判の第2回口頭弁論が、
17年6月13日10時00分から東京地裁(鈴木正弘裁判長)で開かれました。
 世田谷区は第1回口頭弁論で、
「話し合いによる早期の解決を図りたい」
との意向を示していましたが、第2回口頭弁論期日までに和解案を提示する
ことはしませんでした。
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201704.html

 両親は
「当然なんらかの提案があるものと思っていたのに、なぜ出てこないのか?
子どものことを考え早期の解決を提案してきたのではないのか?と驚いている。
 改めて憤りを覚えるし、やはり世田谷区のことは信用できない」
と述べています。

 男子は現在、同区立中の3年生に在籍していますが、武蔵丘小が作成した
事故報告書には事実とは異なる内容が記載されており、書き換えるよう求める
両親の要望は無視されたままです。
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201703-3.html

 こうした学校の姿勢について、「指導死」親の会の代表世話人・大貫隆志氏は
「事実ではない事故報告書を作成し、これを放置しておくなど子どもの尊厳を
損なうものだ」
と厳しく批判しています。

 そして武蔵丘小から中学校に対して、事故に関する詳細な申し送りは行われて
いませんでした。
 したがって生徒が体調不良を訴えても、教職員やクラスメートたちの十分な理解が
得られているわけではありません。
 このため両親は
「修学旅行に参加させるのも不安だが、保護者が不安を訴えることで先生たちに
『"これほど気を使ってあげているのに"と、かえって不審がられることにならないか?』
と、いらぬ心配を余儀なくされている。
 こうした状況が3年以上にわたって続いていることは精神的にもきつく、そろそろ
限界かとも思う。多くの保護者仲間の支えがあって、ぎりぎり耐えられている」
と、その胸中を明らかにしました。

 次回は7月12日16時30分から非公開で弁論準備が行われ、世田谷区からは
今度こそ、和解に関するなんらかの提案がある見通しです。

橿原市の自死遺族、取手市教委の対応について語る

[ 2017/06/04 20:52 ]
 2017年6月2日付朝日新聞は

 茨城県取手市で15年11月、市立中学校3年の中島菜保子さん(当時15)が
自殺したことをめぐり、市教育委員会は1日、市の調査委員会を解散させる方針を
公表した。調査委員会をめぐっては中島さんの両親が「中立性と公平性、遺族への
配慮が欠けている」などと、解散を求めていた。
 藤井信吾取手市長は1日の会見で「市教委の対応が遺族に寄り添ったものでは
なかったことについて、心よりおわび申し上げる」と述べた。同席した矢作進教育長も
「遺族との信頼関係を回復するにはスタートに立ち返り、(調査委員会を)解散する
方向で考えていきたい」と話した。2日に開かれる市教委に解散を提案する方針という。
 市教委は昨年3月「(自殺は)いじめによる重大事態に該当しない」と議決していた。
しかし、先月30日にこの議決を撤回し、文部科学省からも調査の見直しの検討を
指導されていた。31日には、矢作氏が両親に謝罪もしていた。

と伝えました。
 同市教委は6月2日、正式に調査委の解散を決定しました。

 この問題について、いじめを苦に自殺した奈良県橿原市立中1年生(当時)
女子生徒の母親は、
「教育長であれば、市立校に在籍する生徒は我が子同然ではないか?
 線香の一本もあげに行っていなかったと聞いているが、実に驚くべきこと。
 遺族と面会して悲しみの共有も出来ないとは、いじめの有無以前の問題だと思う」
と批判し、
「遺族と行政の温度差は極めて大きく、温度差を解消する努力をしないまま、
行政が事態の沈静化を至上命題として突っ走ってしまうと、このような事態に陥る」
と、自らの経験に重ね合わせて述べました。
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201705-2.html

 取手市が橿原市と同様に、遺族との信頼関係を構築できなかった調査委を解散し、
委員を選任し直したうえで新たに調査委を立ち上げる方針を打ち出していることに
ついては、
「調査委設置に関わる条例や設置要綱などについて、遺族と協議する場を設ける
ことも大事だし、解散した調査委が保管している資料の取り扱いの取り決めも大事。
 時間経過による記憶の劣化、(市教委などによる)隠蔽の恐れなどについても、
同時進行で注視していくことが必要不可欠だ」
と指摘しています。

兵庫県立高、自殺といじめの因果関係認める追加報告書を提出

[ 2017/05/28 21:36 ]
 2017年5月28日付朝日新聞東京本社版は

 12年に兵庫県川西市の県立高校2年の男子生徒(当時17)が自殺した問題で、
同校が自殺といじめの因果関係を事実上認める内容の追加報告書を県教委に
提出していたことがわかった。当初は認めておらず、生徒の両親が報告書の訂正
を求めていた。両親は取材に「息子の無念を少しは晴らすことはできたと思う」
と話した。
 男子生徒は12年9月2日に自宅で命を絶った。学校は同20日付の報告書で、
「背景にいじめがあったことは確認された」とする一方、「暴力的行為や金品の
要求はなかった」として、自殺との関連性は「現時点ではあるともないとも判断
できない」としていた。
 遺族は13年12月、同級生と県側を相手取り、損害賠償を求めて提訴。
昨年3月、神戸地裁は判決でいじめを認定し、慰謝料の支払いを命じた。
 追加の報告書は今月25日付で、A4判3枚。因果関係についての学校側の
直接的な言及はないが、神戸地裁判決を引用。生徒が「ムシ」と呼ばれ、
虫の死骸を教室の椅子の上に置かれるなどの行為がいじめと認定されたことを
説明し、自殺の原因がいじめだとみることに「合理的な疑いを挟む余地はない」
とした判決内容を記した。
 また、独立行政法人「日本スポーツ振興センター」(東京)が、死亡見舞金の
支給の決定通知で「(自殺の)主たる原因は学校の管理下でのいじめ」と
認定したことも盛り込んだ。

と報じています。

 この問題については、川西市の第三者機関「子どもの人権オンブズパーソン」
が13年3月28日付で報告書を公表し、
「一方的ないじめを受け続けた状況や、学校での人間関係が自殺の原因と
なった可能性は極めて高い」
と指摘しています。
http://shunichimori.blog130.fc2.com/blog-date-201304-9.html

 すなわち、同高が12年9月20日にまとめた報告書の記載内容に疑問がある
ことは13年3月28日の段階で指摘されていたにもかかわらず、同高はその後も
4年以上にわたって無視していました。
 県教委も、同高と歩調を合わせるかたちで12年11月5日に調査委員会を
設置し、13年5月2日付で
「いじめはあったが、自殺と関連づけることは困難」
とする報告書をまとめ、学校側の見解を支持していました。

 しかし神戸地裁が16年3月30日、両親の主張を認める判決を言い渡し、
これが確定していることに加え、日本スポーツ振興センターが死亡見舞金を
支給したことを勘案すれば、
「調査委がまとめた報告書が、正当性を有しているとは判断しがたい」
と言わざるを得ませんし、同高が追加報告書を県教委に提出したのも
同様の判断に基づく、と推定できます。

 両親は調査委を「学校擁護委員会」と呼び、今回の学校の対応についても
「両親が働きかけた結果、やっと重い腰を上げたにすぎない。
 調査委が公正で正確な調査をしていれば提訴することもなかったし、
こんなに月日がかかることもなかった。公正・中立な調査委の必要性を痛感した」
と、その複雑な胸中を吐露しています。

全国学校事故・事件を語る会、シンポジウムを開催(その3)

[ 2017/05/24 07:17 ]
 「全国学校事故・事件を語る会」の代表世話人、内海千春氏は議論を総括するなかで
「学校・教委と、被害者・家族を比較すれば、情報量・人的パワー・資金力・発信力
において10対1、100対1という圧倒的な格差がある。『中立性』というが、弱者の
視点に立って被害者を救済するという姿勢を担保しない限り、『中立』ではありえない
のではないか」
と、現状における問題点を指摘しました。
 さらに調査委は誰のためのものなのか?誰のためのものであるべきなのか?
と問いかけ、
「被害者救済を最優先課題とし、被害者と家族に寄り添うものであるべきだ。
 このためには、設置要綱において調査委の目的と所掌事務を明確化しなければ
ならないし、委員の人選においても被害者・家族の意向を反映させることは不可欠だ」
と述べました。

 参加者からは
「調査委が被害者と家族に寄り添うとすれば、それは『人間の尊厳を守る』
ことに行き着く。委員がこの感受性を有しているか否かに尽きる」
といった意見や
「報告書が公表されても、その内容に被害者と家族が納得できないものであれば、
必ず再調査を行うという方向にかじを切るべきだ」
「調査委が報告書を公表したところで、その内容を教育現場にいかに反映させるか?
というプロセスが定まっていない。したがって『報告書は出たが、出しっぱなし』
というのが現実だ」
という意見。
 さらに
「不審死の場合は、全件司法解剖して死因を特定しておくべきだ」
という意見も出ました。
プロフィール

heppoko runner

Author:heppoko runner
 子どもは社会の宝です。
 なぜなら20年後、30年後の社会を支えてくれるのは彼ら彼女らであり、彼ら彼女らのいのちや権利を粗雑に扱うということは、すなわち日本の、ひいては人類の未来に対する責任を放棄することです。
 そんな無責任な態度は、断じて許されません。
 子どものいのちと権利を守るために、わたしたちはなにをしなければならないのか?なにをしてはいけないのか?
 いっしょに考えていただきたいと思います。

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